追い詰められない限り、中国共産党は実は戦争をしたくない。それにはさまざまな理由があるが、そのうち一つは「一人っ子政策」だという。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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東日本大震災によって福島第一原発事故が発生すると、あっという間に中国人は日本から消えた。実はこの時、本人たちが不安になって帰国したというよりも、親が「何が何でも帰ってこい」と言ったケースが多かった。
一人っ子政策によって我が子を溺愛し、甘やかす親が多いため、子供たちは「小皇帝」と呼ばれ、わがままに育った。その傾向はますます強まっている。
顕著なのが人民解放軍だ。親は子供を軍に入れるために軍の有力者に賄賂を渡す。愛国心からではなく、「安定した職業」に就職させたいからだ。最近は雇用が絶対的に不足しているため、賄賂はどんどん値上がりしている。さらに訓練のきつくない部署に配属してもらうために、採用担当に賄賂を支払う。
親は国を守るために子供に命を懸けて戦ってほしいとは思っていない。むしろ「いざ戦争となったら自分が生き残ることだけを考えろ」と教えているほどだ。その意味では、尖閣諸島をめぐる日中の軋轢は親にしてみれば気が気ではないだろう。
環球時報はこれまでたびたび「兵士が女性化している」など士気の低下を問題視する記事を掲載した。230万人を擁する人民解放軍だが、兵士たちの偽らざる実態は、とても“屈強な猛者たち”とは言えないのだ。
※SAPIO2013年2月号