中国の機嫌を損ねたら13億人の市場を失って日本は大打撃を受ける──という説がまかり通っている。だが、実は日本が受ける経済的な打撃は軽微であり、本当に困るのは中国のほうだと経済評論家の三橋貴明氏は指摘する。
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2011年末の日中両国の輸出依存度(純輸出のGDPに占める割合)を見てみよう。
日本:14%
中国:26%
ちなみにアメリカは10%、韓国は50%である。日本は貿易立国と言われるが、実際には内需大国だ。韓国は貿易が滞ればたちまち国が干上がるが、日本はそうではない。中国のほうがよほど貿易に依存している。
さらに日本の対中輸出(香港を除く)はGDPの2.76%である。貿易収支で見れば、0.38%の貿易赤字である。中国と貿易をやめれば、貿易赤字がそのぶん減り、GDPが逆に増える。もっとも香港を含めた貿易収支は0.33%の黒字なので、そのぶんが消えると見たほうが正確かもしれない。
もちろんそれは経済に良い影響は与えない。金額も小さくはないが、少なくとも国家の未来を左右するような外交や安全保障の足かせになるものではない。それがなくなれば国が滅ぶということでもない以上、経済、ビジネスは安全保障より優先されるべきではない。国の主権が守られるから商売も可能となるのだ。
にもかかわらず、特定の企業の利益を代弁する者がミクロなビジネスの成功のために、国民国家のマクロな国益を犠牲にしようとする動きが実際にある。そのような政治を歪める行為は非常に問題だ。
※SAPIO2013年2月号