今年の初詣には、どのコインを賽銭箱へ入れただろうか。十分ご縁がありますようにとの語呂あわせがあるように、お賽銭には5円玉をと思ったものの、財布を探したら見つからなかった人も多いのではないか。実際に、新しい5円玉は確保しづらくなっているらしい。
例年、大山神社(広島県尾道市)では、お札やお守りを購入した人へのお釣りとして、新品の5円玉を「御縁玉」として渡すのを恒例としていた。ところが、この正月は初詣客へ贈るのを断念したと昨年末に報じられ、初詣に訪れた人へ縁起担ぎも様変わりさせられていると話題になった。
本当に、世間から5円玉は姿を消しつつあるのだろうか。
造幣局によれば、平成22年、23年ともに一般流通用の5円玉は製造されなかったという。だからといって製造量がゼロだったのではなく、「ミントセット」と呼ばれる、同じ製造年の硬貨が一種類ずつ専用ケースに収められた貨幣セット用の5円玉は製造されている。こうしたことは今回が初めてではなく、流通量をみながら適宜、硬貨の製造枚数が調整されているため、過去には昭和62年に50円玉が製造されなかったことがあった。
平成24年の製造枚数は集計が終わらないと確定しないが、平成24年も一般流通用の5円玉はつくられなかったとみられている。
では、平成22年以降の5円玉は、大きな価値に化けているということなのか。
貨幣専門店の銀座コインによれば、「確かに、平成22年と23年のミントセットは例年よりも高い値段がついています」という。
「最近の国の方針として、電子マネーやクレジットカード決済が促されており、実際に、かなり普及してきました。その影響で、硬貨の製造量が全体的に減っています。
コインの値段は、集めている人のニーズがどのくらいあるかにかかっています。コレクションへ加えたいという需要に対して、現存する数が少なければ価格が上がります。新しいか古いかではなく、あくまでも求める数に対して数が多いか少ないかです」
収集家には、現行コインを年代別にそろえたいケースがあり、一般流通用が製造されなかった年の価値が極端に上がることもあるという。それならば、直近の5円玉の場合はどうか。
「平成23年のミントセットについては、貨幣局は1700円で販売していますが、うちでは5000円の値段をつけました。今はあくまでセットで流通しています。5円玉だけがバラで出てくることは当分、ないと思いますよ」
セット販売しかないのなら、財布の中に入ってきた小銭に幸運が潜むことはないのかと落胆するかもしれない。だが、あきらめるのは早い。「日本貨幣カタログ2013」(日本貨幣商協同組合)によれば、一般流通用が製造されてはいるものの、数が少ないために並品(※摩耗がすすみキズ、汚れがある使用済みのもの)でも額面より価格が上がっている硬貨がいくつもある。
平成13年の100円硬貨は300円、平成12年の50円硬貨には400円、平成22年の1円硬貨にも200円という価格がつけられているのだ。なかでも、平成17年以降の5円硬貨は、使用済みでも軒並み20倍以上の価格となっており、平成21年に至っては200円の値がついており、十分に貴重なものと言える。
たかが5円と侮るなかれ。やっぱり5円玉は十分なご縁を運んでくるありがたいものだった。