1月5日の東京・築地市場の初競りで、青森・大間産のクロマグロが1億5540万円の値をつけたが、このマグロを釣り上げたのは、代々、大間で漁師をしている一家に生まれた竹内大輔さん(36才)だ。
1億5540万円のうち5.5%は荷受会社、4.0%が大間漁協、1.5%が青森県漁連に入る。残る約1億4000万円に最高税率40%の所得税がかかるので、大輔さんの手取りは8300万円ほどになりそうだ。ただし来年にはさらに住民税が10%、少なくとも1400万円が引かれることになる。税金の支払いが他人事ながら大変そうだが、それはさておき、ほかならぬ大輔さんに話を聞くと?
「高値がついたことは、それは嬉しいよ。ただ、他が揚がらなかったから、ラッキーなだけかな。金額は予想よりはるかに多い。すごすぎる値段で、何に使うかは全然考えていません」
初競りの報道があってからというもの、大輔さんはやっかみの声やいたずら電話に悩まされているという。だが、マグロ漁はただ儲かるだけの商売ではない。
「釣れればいいけど、1か月全然釣れないときもある。それでも燃料代は毎日かかる。マグロで儲かるなんて大間違いだよ」
と大輔さんは苦笑する。大間の漁業関係者たちも、揃って厳しい現状を口にする。
「船を買うために数千万円も借金し、釣れなければ燃料代で借金ばかりがかさんでいく。燃料代は年々上がって、1回の漁で少なくとも5万円程度はかかる。それでもマグロを釣らないと収入はゼロだから、休むわけにはいかない。年間で数千万円の水揚げがある船がある一方で、300万~400万円しかない船もザラ。厳しい世界ですよ」
マグロ漁は“稼ぎ”だけではなく、漁師としてのプライドを賭けた勝負でもある。大輔さんの母・紀子さんは、嬉しそうにこう話した。 「チャンピオンベルト(最高値記録)を2010年まではお父さん(薫さん・2001年に2020万円を記録)が保持していた。それを息子が取り返してくれた。親としては誉れに思いますよ」
薫さんに、大間の漁師にとってマグロ漁とは? と尋ねると、しばらく置いて「夢。格好よくいえば男のロマンだね」という答えが返ってきた。
※女性セブン2013年1月31日号