安倍晋三首相が、昨年12月31日付の産経新聞のインタビューで、こんな発言をしている。
「皇位継承は男系男子という私の方針は変わらない。野田佳彦政権でやったことは白紙にする」
野田政権が取り組んだ「女性宮家創設」に、安倍首相は真っ向から“NO”を突きつけたのだ。
しかし、安倍首相は、この議論が過熱した当時から、「性急に考えるべきではない」と、女性宮家創設に反対の立場を取り続けてきた。また、自らが会長を務める『皇室の伝統を守る会』は、「女性宮家創設は、女性・女系天皇容認論の布石になりかねない」「天皇制の根幹を揺るがす、看過できない問題だ」という厳しい批判を繰り返してきた。
そして昨年12月、首相に就任するやいなや、野田政権が1年以上かけて取り組んできた女性宮家創設を“白紙に戻す”と明言したのだった。
振り返れば、安倍首相が皇室典範改正議論を“白紙”に戻すのは今回が初めてではない。2004年、当時の小泉純一郎首相(71才)の下、『皇室典範に関する有識者会議』が発足。“女子や女系の皇族への皇位継承資格の拡大”など、安定的な皇位継承の方針が検討された。
しかし2006年9月、秋篠宮家に悠仁さまが誕生すると議論は一気にトーンダウン。そして、その直後に首相に就任した安倍首相は、その方針を“白紙”に戻したのだった。安倍首相はかつてこんな思いを語っていた。
<「有識者会議」の報告書は、現行憲法との整合性や、女性の社会進出が進み、性別による役割意識が薄れた世論をその理由にあげている。
だが、二千年以上の歴史をもつ皇室と、たかだか六十年あまりの歴史しかもたない憲法や、移ろいやすい世論を、同断に論じることはナンセンスでしかない>
そんな安倍首相の考えに、前述したヒアリングや有識者会議で意見を述べた京都産業大学の所功名誉教授はこう憤る。
「議論を“白紙”に戻されたことは非常に残念です。両陛下がご高齢であること、女性皇族が結婚適齢期に入っているといった皇室の現状に対して明確な認識が不充分だと思います。ですから、“自分たちの見識のなかで考えたことが絶対だ”という態度なのでしょう。
象徴天皇制度は、国民の共感と理解のもとに成り立っているのに、彼らのいう旧宮家の復帰などは、普通の人々の感覚としては違和感を覚えずにはいられません」
※女性セブン2013年1月31日号