復興予算の流用批判を浴びた民主党政権は昨年の総選挙直前、「復興予算は原則、被災地以外では使わない」という方針を決め、35の復興事業を凍結した。しかし、時すでに遅し。凍結できたのは総額約168億円分と復興予算全体のわずか0.1%以下にすぎない。
それというのも、シロアリ役人たちは「予算が凍結されないうちに使ってしまえ」と、5年分のはずだった19兆円の復興予算をわずか2年で18兆円も食い散らかしてしまったからだ。
しかも、火事場泥棒的な流用はまだ続いている。財務省は来年度の復興予算の概算要求に「仙台港の税関の大型X線検査装置の復旧等」として約25億円を盛り込んだ。そのうち装置の復旧に本当に必要なのは半額の約12億円で、残りは関西の税務署改修や復興増税導入のための国税庁のコンピュータシステム構築の費用をこっそり潜り込ませていた。
被災者のために使うはずの復興予算をよりによって増税のシステム費用に回すとは許し難い国民への背信行為というほかない。企みは東京新聞の報道によって未然に発覚し、税務署改修やシステム構築予算は一般会計から出すことになったものの、予算を査定する財務省が先頭に立って流用に狡知をめぐらせているのだから、他省庁に歯止めがかかるはずがない。
内閣府は来年度の復興予算(概算要求)に沖縄の国道建設費を盛り込み、農水省は復興事業に職員の人件費や残業代を盛り込み、北海道開発局は休職中の職員の給料まで復興予算から支払っている。
霞が関ぐるみで国民にわからないように予算流用が可能な仕組みをつくりあげていたのだ。
復興増税を決めた2011年の第3次補正の予算総則の修正に秘密があった。総則では、農水省の出先機関である地方農政局の「工事諸費」から職員の人件費や残業代、各種手当を支出できる規定を追加し、北海道開発局の工事諸費には職員の給与・手当に加えて「休職者給与」まで出せる規定を盛り込むなど数々の工作がなされた。
これによって復興予算から、働いていない休職中の役人の給料まで付け回しできるようになっていたのだ。
※週刊ポスト2013年2月1日号