広島県・呉市で昨年から計15件に及ぶネコの虐殺事件が発生している。中には農家の畑で頭部だけの死骸が見つかるなど、あまりの猟奇ぶりに住民は恐怖に震えがあっている。
このためか、事件は予期せぬ悪影響を生み出している。不安に駆られた住民の間で“中傷合戦”が始まっているのだ。
「“あの家には引きこもりの子供がいる”とか“就職浪人の子供がいて親子喧嘩が絶えない”、“夜中にバイクで出かける若者がいる”といった通報まである。捜査員が来れば、それだけで容疑者扱いになり、近所の噂になるといった悪循環を生む。都会とは異なり、田舎では生活に支障が生じかねません」(地元紙記者)
「何もしてないのに疑うような目で見られる」と愚痴をこぼすのは、遺棄現場となった公園近くに住む20代の大学生だ。
「夜中にバイクで走ろうものなら、何度も警察官に職務質問されてしまう。ついでのように補導されてしまうので、若者はすっかり出歩かなくなりましたよ」
さらに、事件は現代特有の“闇”をも抉り出した。
「ネットの世界でも、住民を誹謗中傷するような書き込みが増えています。ただ、中には重要な情報が含まれる可能性があるから、無視できない。
2002年に、福岡県で虐待したネコの写真をネットで公開した男性が、実刑判決を受けるという事例もありましたからね。しかし、無責任な書き込みが多く、それに一つ一つ対応することによって、捜査の妨げにもなっています」(捜査幹部)
※週刊ポスト2013年2月1日号