中国の軍拡は周知の事実だが、実は追い詰められない限り、中国共産党は戦争をしたくない。それにはさまざまな理由があるが、そのうち一つは共産党幹部の対外資産だという。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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共産党幹部の資産の多くはアメリカにある。失脚した薄熙来は5000億円もの賄賂を受け取り、その多くを海外送金したと言われている。また温家宝首相はニューヨーク・タイムズに一族で少なくとも27億ドル(約2200億円)もの資産を貯め込んでいると報じられた。さらに習近平総書記も親族が数億ドルの資産を保有しているとブルームバーグに報じられた。
共産党幹部は中国の将来を信じていない。いざとなれば身一つで海外に逃げられるように、家族を先に海外へ移住させ、資産の多くを海外に移している。ちなみに習近平の姉夫婦の国籍はカナダ、弟はオーストラリア在住、娘はアメリカ留学中である。そして、海外に移した資産の多くがアメリカに集中していると見ていい。
仮にアメリカが共産党幹部の資産を凍結すれば、大打撃となる。尖閣諸島、台湾、南シナ海と中国が覇権主義を前面に押し出して各国と対立している領域で今後アメリカとの緊張が高まらないという保証はない。万が一アメリカ軍と衝突するような事態になれば、幹部たちは一夜にして資産の大半を失う。つまり、在米資産は抑止力となっている。
※SAPIO2013年2月号