にわかに「育て直し」という言葉が脚光を浴びているが、簡単な作業ではない。じっくり腰を据えて取り組む根気と辛抱が必要だ。
もちろん悩みを親だけで抱え込むことはない。とくに子供が思春期である場合、両親だけで「育て直し」をするのは難しいケースもある。他人に関与してもらうこともひとつの手だ。
ニートや引きこもり支援のためのNPO法人「ニュースタート事務局」の二神能基氏はニュースタート事務局が行なっている『レンタルお兄さん・お姉さん』のシステムを奨める。
「親子はどうしてもその力関係から、上下の関係になってしまいがちです。そんな時には少し年上のお兄さんやお姉さんが出て行って“ななめ上からの関係”でアドバイスをするほうが、はるかに効果があることもある」(二神氏)
『レンタルお兄さん・お姉さん』は、引きこもりやニートの子供を抱える親からの依頼を受け、20~40代のお兄さんお姉さんが、手紙や電話、家庭訪問などを通じて子供たちの心を開き、社会復帰を目指すというもの。1998年からスタートし、依頼が後を絶たない。
「最近では、あわせて東北の被災地ボランティアに連れて行ったりしていますが、子供たちにとっては立ち直るための非常にいい体験になっているようです。レンタルお兄さん、お姉さんと泊まり込みで瓦礫の撤去作業をしていた不登校の男の子が、ボランティアの人たちや被災者と触れ合うなかで自分を見つめ直し、両親の大切さを再確認できたというケースもありました」(二神氏)
非行や問題行動を起こすようになった子供を、「育て方を間違えた」とただ嘆いて放置しているのは無責任だ。子供たちの人生はまだまだ長いのだから、ぜひできるところから「育て直し」を試みてみるべきだ。
※週刊ポスト2013年1月25日号