渦中の物件に、とうとう「あの人」が姿を現わした。
都内屈指の高級住宅地である港区白金台。三島由紀夫の小説『宴のあと』の舞台になった有名料亭「般若苑」の約7000平方メートルの広大な跡地には現在、地上4階、地下2階の巨大施設が建設中である。
昨年の大晦日、その敷地にグレーのワンボックスカーが入っていった。居合わせた通行人は、車から一瞬姿を現わした男性の姿を見逃さなかった。
「ピンクのシャツにベージュのコートを羽織った小柄な人でした。顔を見ると……。間違いありません、あれはソフトバンクの孫正義社長です!」
建設がスタートした2010年当初から、入居者が不明ということもあり、一部住民の間では反対運動が巻き起こっていた。
建設計画によれば、深さ22メートルまで掘り下げられた地下には、ゴルフの打ちっ放し練習場や25メートルプール、ボウリング場まで備えている。付近の不動産業者によれば「土地代だけで55億円、建設費も含めれば80億円は優に超える物件」という。
そこまでの巨大施設であるにもかかわらず、施主側は「アングロサクソン系の家族が入居予定だ」と告げるのみで、具体的な情報を伏せ続けた。
そのうえ、施主である「白金ハウスプロジェクト」はこの建設事業以外に活動の実績がない。同社設立時の代表がソフトバンクの税務顧問だった人物であることから「これはダミー会社で、孫正義が本当の施主に違いない」と噂されていたのである。
孫氏を知る関係者がいう。
「孫社長はすでに麻布永坂町に土地・建物あわせて70億円御殿といわれる大豪邸を持っており、さらに白金台に新たな自宅を建てるとは考えづらいでしょう。しかし彼が、海外のVIPに向けて物件を斡旋したり、迎賓館のようにその施設を使う可能性は十分あると考えられます」
近隣住民たちの間では、大晦日以降もたびたび孫氏を乗せたと思われるワンボックスカーの出入りが確認されている。
本誌は孫氏が白金台に現われた理由についてソフトバンクに聞いたが、「当社として一切関知していないということで、回答のすべてとさせて頂きたい」(広報室)というばかり。大晦日の視察については否定も肯定もしなかった。
“白金御殿”は1月末にも竣工の予定だ。すでに現地にはリゾートホテルを思わせる白壁の屋敷がそびえ立っている。はたしてこの謎の物件の地下でゴルフに興じるのは誰なのだろうか。
※週刊ポスト2013年2月8日号