弾ける泡で気分爽快。飲料や入浴剤などに使われる「炭酸」が、男性のスキンケア需要まで“刺激”している。
千葉県のとある理容室では、今年から「5分300円」の炭酸パックサービスを導入したところ、意外にもリピーターが続出しているという。
「シェービング後に炭酸で泡立たせた特殊な洗顔フォームで顔をパックします。そのままの状態で5分後に洗い流すと、黒ずんだ汚れが取れ、ツルツルの肌になります。一度体験するとやみつきの男性が多く、特に40代以上の方に好評です」(理容室店主)
この理容室では、2年前より炭酸水で頭皮をマッサージしながらトリートメントする「ヘッドスパ」メニューを取り入れたところ、炭酸による清涼感から特に夏場にオーダーが引きも切らず、ヘッドスパだけ受けにくる利用者もいたそうだ。
そもそも、炭酸にはどのような効果があるのか。長年の炭酸水研究を床ずれなど傷治療に応用し、「ミスター炭酸」の異名を取る国際医療福祉大学の前田眞治教授に聞いてみた。
「いちばん大きな効果は血行促進です。炭酸水に含まれる二酸化炭素は人間の細胞にとっては老廃物なので、皮膚に吸収されると排出しようと毛細血管を広げる物質が分泌され、血行が良くなるのです。そして、血流量が増えれば酸素の供給が増えて細胞が活性化し、新陳代謝が早くなるのではないかと期待されています」
残念ながら、細胞が若返ってアンチエイジング効果があるところまでは立証されていないらしいが、炭酸水の気泡に皮脂や角質など汚れを吸い込む性質があることは分かっており、その驚きの洗浄効果は前田氏の折り紙つきだ。
すでに、女性用の炭酸美容商品は、一般消費者向けのアイテムとして人気を博している。カネボウ化粧品やコーセーほか大手メーカーが「泡マスク」などの呼称で続々とパックや洗顔料のラインアップを増やしているからだ。
一方、男性向けの炭酸スキンケア商品は、業務用以外は皆無に等しいのが現状。だが、男性のスキンケア意識が年々高まっていることを考慮すれば、いつ店頭に並んでもおかしくない。
男性美容研究家の藤村岳氏は、男性の肌事情について解説する。
「炭酸というとヒンヤリした冷たいイメージがありますが、血行をよくするので実はポカポカと温かくなります。男性の中には血液の循環が悪く、隠れ冷え性の人が多い。だからこそ、代謝を高めてくれる炭酸を使ったスキンケアは有効だと思います」
ここ数年で、男性も堂々とスキンケアできる土壌がようやく整ったと分析する藤村氏。しかも、馴染み深く女性っぽいイメージのしない炭酸だからこそ、男性にも定着する美容法になり得ると予測する。
前出の前田氏によれば、何も炭酸美容は専用商品に限らず、100円前後で市販されている飲料用の炭酸水でも代用できると話す。最近では「ソーダストリーム」や「ソーダスパークル」など、ガスボンベと水をセットするだけで、自宅にいながら炭酸水が瞬時に作れる輸入機器もヒットしている。
「男性の中には、安い炭酸水を買ってきてシャンプーと混ぜてスカルプケア代わりにしたり、洗面器に流し入れて洗顔したりする人もいると聞きます」(冒頭の理容室店主)
ただ、もともと化粧品として売られている商品ではないだけに、注意も必要だ。
「飲料用で売られているものは、糖分が入っていたり炭酸水素ナトリウムが多く含まれたりすると、稀に皮膚が炎症を起こして痛みや痒みを伴う場合もあります。肌に合わない場合はすぐに使用を控えたほうがいいでしょう」(前田氏)
適度な刺激を受けながら、万能な炭酸パワーを存分に確かめたい。