2013年は企業倒産が相次ぎ経済格差がさらに拡大するその引き金を引くのは3月末の金融モラトリアム法(中小企業金融円滑化法)の終了だ。その時、何が起きるのか。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。
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中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)により金融機関が融資条件を緩和した中小企業は、全国420万社の約1割に相当する30万~40万社に上ると見られている。累計の融資金額は約80兆円に達する。特に目立つのは同一企業が何度も申請するケースで、30万~40万社のうち「5万~6万社は転廃業が必要」(金融庁幹部)と指摘されている。本業で再生する見込みのない“倒産予備軍”という意味だ。
2009年に施行された円滑化法は、もう1年、あと1年と繰り返し延長されてきたが、昨年の延長が「最後」と定められ、この3月に終了する。シャープやパナソニックなど電機メーカーによる大規模なリストラの皺寄せも取引先中小企業に及んでおり、そこに円滑化法の終了が重なれば“首の皮一枚”で生き延びてきた中小企業の資金繰りが一気に悪化し、バタバタと倒産しかねない。
前出の5万~6万社で働く55万人強(推計)以外にも解雇される、あるいは正社員から非正規などに契約変更される被雇用者は2013年にはますます増えるだろう。仕事を失わないまでも、待遇の悪化など、100万人を超える中小企業社員に影響が及ぶと推測される。
たとえ “倒産予備軍”に入っていなくても、円滑化法で一時的に資金繰りが改善されている中小企業30万~40万社の「儲からない」実態は円滑化法施行後も変わっていない。「倒産の先送りで“ゾンビ企業”を増やした」という指摘すらある。
根本的な再建にはリストラと新たな成長戦略が必要だが、中小企業が自ら改革するのは難しく、円滑化法が定めた「1年以内の再建計画」すら、まともに作れない企業が多い。
※SAPIO2013年2月号