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日本初の女性音楽評論家・DJ 湯川れい子の半生を描く1冊

【書評】『評伝★湯川れい子 音楽に恋をして♪』和田靜香/朝日新聞出版/1680円

【評者】北尾トロ(フリーライター・『季刊レポ』編集長)

 東日本大震災以降、脱原発に向けての積極的な活動が目立っている。著作にはスピリチュアル関連書も多く、その印象を強く持つ人もいるかもしれない。でも、湯川れい子という人の核は音楽、それしかありえないのだとタイトルは強く訴える。

 なにせ日本初の女性音楽評論家でありラジオのDJだ。1960年代からずっと、ビートルズやストーンズ、プレスリー、レッド・ツェッペリン、マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパーなどなど、時代の頂点に立つスターを追い、時を共にし、彼らの音楽を紹介し続けてきた。

 作詞家としても成功し、アン・ルイスの『六本木心中』やシャネルズの『ランナウェイ』をはじめヒット作をたくさん持つ。もう、ネタは無尽蔵。音楽好きならてんこ盛りのエピソードだけで本書を手に取る値打ちがあるし、第二次大戦での兄の戦死、自分を見失いかけて一時的に音楽評論家を引退したこと、離婚経験なども隠さず綴られている。

 といって大物感を前面に出して「どんなもんだ私の人生!」と威張る本じゃない。お嬢さん育ちで、容姿やチャンスにも恵まれたのは事実なんだけど、そんな人ならたくさんいる。半世紀以上にわたって活躍するのは、そればっかりじゃ無理だ。

 ぼくはビートルズ来日時、嬌声をあげる少女たちを目にした湯川が心に誓ったことが原動力だと思う。<私は一生、この「キャアア」という叫びの側にいよう>。これだ。文化人としての立場を求められたとき、人生の岐路に立たされたとき、彼女はいつもこの原点に戻る。実際、結婚式にプレスリーを招待しようとしたり、なんだかわからない情熱、平気でぶつけるからね。

 ミーハーいいじゃないか、ミーハーどんとこい!

 これはできそうでできないよ。業界に長くいればいるほど、発想や行動は否応なくプロのそれになっていくものなのだ。著者の和田靜香さんは高校時代、DJを務めた番組のリスナーだったのが縁で湯川の下で働くことになった、いわばお弟子さん。長時間のインタビューを何度も重ねたに違いなく、そのたびに「キャアア」とふたりして盛り上がったことが想像できる。

<うちの師匠すげー、これは活字にして残さねば>と奮い立った著者もまた、ビートルズに嬌声をあげた少女の正統なる後継者なのだ。

※女性セブン2013年2月21日号

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