先月末、日本教職員組合(日教組)の集会で発表されたある報告が話題を呼んでいる。
「先生、この急須を火にかければいいですか」──昨年9月、福岡にある県立高校の家庭科調理実習で、1年の男子生徒が茶葉と水を入れた急須をそのまま火にかけようとした。前年度にも同様の生徒がいたことから、教諭は1年生240人を対象に、「冬場、家庭ではどうやってお茶を飲むか」というアンケートを行った。
結果は、急須でお茶をいれる生徒は全体の約2割のみ。高校生の8割が「急須を使えない」可能性があるというのだ。朝日新聞が、このアンケート結果を、<最近の高校生、急須使えず?>(1月27日付朝刊)と報じたことに、「まさか」と驚いた人も多かったはず。
ペットボトルや缶入りの“緑茶ドリンク”の生産量は、1993年の26万6000キロリットルから、2011年の238万100キロリットルと、18年で10倍近くに増加している(日本茶業中央会調べ)。そしてこの“ペットボトル”の普及が、急須を使う機会が減った一因なのでは、という説も。日本茶業中央会専務理事の柳澤興一郎さんはこう語る。
「はっきりした因果関係はわかりませんが、親御さんが30、40代の家庭だと、お茶をペットボトルで飲むのは当たり前になっているでしょうね。嗜好品の中でも、紅茶やコーヒーに比べ、緑茶は20代以下と70代以上の世帯では、かける金額が年間7000円以上開きがあります。核家族化が進み、緑茶を飲む高齢世代との団らんがなくなったために、急須を日常的に使う家庭が減少しているのでしょう」
ひと口に「日本茶」といっても、さまざまな種類の茶葉がある。そして、それぞれの種類に応じていれ方も異なるが、日本茶インストラクターの奥村静二さんによると、「日本におけるお茶の生産量のうち約7割が煎茶。煎茶の場合、70~80℃というキーワードを押さえておけば大丈夫」とのことだ。
紅茶(発酵茶)やウーロン茶(半発酵茶)が“香り”を楽しむのに対して、緑茶は、“渋み・苦み・うまみ・甘み”を味わうとされる。いれ方次第で味わいが変わる繊細な飲み物だ。
「渋みはカテキンというポリフェノールの一種から、甘みとうまみはアミノ酸の一種のテアニンから感じます。カテキンは高温で、テアニンは低温で浸出(成分がとけ出ること)されやすいため、玉露などの甘みを特徴とするお茶はぬるめのお湯でいれるのがおいしいとされます。ただ、最終的には好みですから、自分やお客さまの好みに合わせて茶葉やいれ方を工夫してみてください」(奥村さん)
※女性セブン2013年2月21日号