大阪市立桜宮高の高2自殺事件を機に、全国で明らかになる体罰問題、いじめの隠蔽、わいせつ犯罪など、教師の不祥事が相次いでいる。
学校と教師への尊敬が失われると同時に、保護者の間で広まっていったのが、「学校=サービス業」とする考え方だった。公立小学校で23年間の教員経験を持つ教育評論家、親野智可等氏によれば、
「最近は、教師たちに子供ひとりひとりへの個別な対応が求められるようになりました」と言う。
「たとえば小学校では毎朝、先生の机の上に親からの連絡帳が山積みになる。『うちの子は納豆を食べたことがないので、見てあげてください』『友達とケンカして夜眠れなかったようです。話を聞いてあげてください』など。すべてに目を通し、必要な対応をしつつ、親への返事も書かなければなりません」(親野氏)
“まさか、こんなことまで”というリクエストであっても、モンスター・ペアレンツの存在を考えればおろそかにはできない。
そのうえ、いじめや体罰、教師によるわいせつ事件などが報道されるたび、教師には上司や教育委員会からアンケートやレポートの提出が求められるという。東京都で昨年3月まで働いていた元中学校教師が言う。
「例えば他府県の学校でいじめ事件が起きて報道されると、すぐに研修会が開かれ、1600字×10枚のレポートの提出を求められたりします。校長や教頭にすれば、保護者から聞かれた際に、“うちではしっかり対策をしています”と言える形を残しておきたいのです。教育委員会からも毎日のようにアンケートが届き、放課後は子供に向き合う時間がなくて、ずっとパソコンに向き合っている状態の先生もいます」
部活の顧問を受け持つ場合はさらに過酷だ。平日は午後6時まで部活で指導をした後、提出しなければならないレポートや生徒・親への連絡をまとめ、帰りが深夜に及ぶことも珍しくない。部活の試合や発表会などがあれば週末も休めない。
そのうえ子供たちの変化も、教師の悩みの種だ。
「中学生になっても、授業中に立ち歩く子供がいます。注意しても聞かない。それどころか、教師が体罰批判を気にして厳しくできないことを知っていて、『殴ってみろよ、教育委員会に訴えるぞ』と挑発する子供だっている。なかには『殴られた』と嘘をつく子供までいるんです」(前出の元教師)
現在、病気で休職中の教師は約8500人。そのうちうつ病などの精神疾患が5000人以上を占めている。不祥事によって処分された教師より、壊れていく教師のほうが多いというのが現状なのだ。
※女性セブン2013年2月21日号