2月下旬に安倍晋三首相が訪米するが、首脳会談で安倍首相はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加の表明を強いられる可能性が高い。そうなると自民党内が蜂の巣をつついた騒ぎになるのは明らかだ。
自民党のTPP反対議連(TPP参加の即時撤回を求める会)は約210人の議員が参加する党内最大勢力で、農水族のドンは安倍首相のライバルの石破幹事長や林芳正・農水相。議員の多くは昨年12月の総選挙でJAの政治団体・農政連と、「TPP反対」の誓約書(政策協定)を交わした。安倍首相が交渉参加を見切り発車すれば、反対派が蜂起して、まさに政権の命取りになりかねない。
安倍首相は、先月末、出演したテレビ番組で「参院選前に方向性を出す」として踏み込んだ発言をしたが、翌日にはトーンダウン。菅官房長官らが火消しに走るドタバタ劇を演じた。
JA佐賀中央会事務局の話だ。
「うちは総選挙で推薦した自民党候補に『TPP交渉参加を断固阻止する』という内容の誓約書を書いていただきました。他県も政策協定書で反対の意思を文書にしてもらっている。先日も自民党の国会議員の方々には誓約書の内容を確認してもらったばかり。もし、安倍政権が約束を守らなければ、当然、参院選での推薦はやめるという声が高まるでしょう」
TPP反対議連会長の森山裕・衆院議員はこういう言い方でドスを効かせた。
「交渉に参加しないというのは自民党の公約だ。その公約で総選挙を勝った。経済界がTPP参加推進を打ち出しているからJAは不安を感じているようだが、公約を守るといっている安倍総理がTPP交渉参加を表明するはずがありません」
日米同盟重視を掲げる安倍政権は米国には「TPP参加表明は参院選まで待ってほしい」と頼み、農協には「参院選後も表明しない」という。
綱渡りの二枚舌が破綻するのは時間の問題だ。
※週刊ポスト2013年2月15・22日号