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ダサいと実はモテる ダジャレはクリエイティブで知的なもの

野球は早朝、土日と年間40試合ほど。いまだに本気のプレーヤー。

世の中何かと「クール」だったり「イケメン」だったりがもてはやされる風潮もありますが、そんな人はほんの一握りなわけで、多くの人は飲み屋で「電話をかけたら誰も出んわ」などとガハハハハとダジャレを言ってはゲハゲハと笑うわけですね。

 これまでに約200冊の書籍を作ってきた著述家・編集者の石黒謙吾さん(52)は、新著『7つの動詞で自分を動かす ~言い訳しない人生の思考法』(実業之日本社)で、先輩編集者のこんな発言を紹介しています。

「あのな、クラブでおしぼりが出てくるだろ。あれで堂々と首をふくんだ。これで一発でモテるから。かっこ悪いとこ見せたほうがいいんだって」

 ダサさこそ身を助ける、といったことなのでしょうか? ということで、石黒さんに「ダサい」とは一体何かを聞いてきました。もしかして我らの時代が来ているのでしょうか。

――石黒さんはダジャレもよく言いますし、ダサいのが好きなんですか?

石黒:ダサいのが好きというよりはこまっしゃくれたのが嫌いなんですよね。こじゃれたフレンチのお店へ行くと、味はおいしいのですが、アメニティ(環境)として、あまりおいしく感じられないんですよ。ガハハハハって言いながら飯食えないから。僕はしぶい和風一軒家のお好み焼き屋とかホルモン焼きのお店とかが好き。元々こまっしゃくれたのが嫌いなのは、なんだかスカしているのが見えてしまうからなんですよ。

イギリス王室みたいな人はおしゃれに振る舞っていても、それはスカしていません。3代続く会社の経営者とかもスカしていません。1代や2代くらいだったらスカしていることがバレそうとか。あくまでも身の丈のままアウトプットすればいいのでは? と思います。タレントさんでも、スポーツ選手でも、カッコつけている人は背伸びしている様が見えてしまう。そういうところが特にダサいと思ってしまいます。中身がないのに膨らませているように見えるとケツの穴が小さいなあと感じます。
つまり、現代版、水戸黄門であり、遠山の金さんであるべしと!自戒も込めて。たぶん、自分を小さく見せる(笑)のが生理的に好き。

――ここで言う意味の「ダサい」はどういう意味ですか?

ここで言う「ダサい」は中身として「格好悪い」といったニュアンスですよ。見た目、ルックスの話もややこしくなるので別にして、です。しかし「愛すべきダサさ」は違います。僕は、雑草系みたいな、根っこの跳ね返りの強さみたいなものを持った人がいいな、と思っているんですよ。書籍で書いた「おしぼりで首を拭く人はモテる」と言う先輩編集者ですが、彼は声が大きくて動作が粗雑です。

この人が大雑把な超プロデューサータイプの人で、体が大きくて、決して二枚目ではないのですが、やることなすことがダイナミックでした。飲み屋で首を拭き、編集部では「100円貸せ」とか言うのですが、あまりにもダイナミックな人なのでつい貸して…いや、あげてしまう(笑)。

そして、「おしぼりで首を拭く人はモテる」の真意ですが、「高級な店であればあるほど、スカした客が多い。そんな中でおしぼりで首を拭くようなヤツは目立つ。よってそういった場所であればあるほど、ダサい人がモテる」といったものがあるそうです。僕が思うに、腹を割った感がある、という親近感でしょう。

――石黒さんがダジャレをよく言う理由は何ですか?

石黒:僕がダジャレを言うのは、飲みに行く機会が多く、その時に皆がそれなりに楽しめればいいな、と思っているから。一時期は本当に毎日飲んでいました。仕事よりも飲む方が大変でしたね~。僕だって政治経済や社会のことを考えていないわけもないですが、いちいちそれを語りません。盛り上がりにくいもん。

どうしてもその手の話題を飲みの席で話すと、予定調和的なオチになりがちだし、「経済学んでいます」とか「政治の研究をずっとやってます」という人とは発言内容の迫力がまるで違うでしょ。新聞とかのメディアで得た話だけでは、迫力ある話はできないので、僕はそのテーマでは話さないでいい。だったらダジャレを言おう、と思っています。

そして僕はダジャレそのものはダサいとは思っていません。見立て思考をベースにした、とても知的なクリエイションです。長くなるのでここらにしておきますが、僕がダイヤモンドオンラインでダジャレの構造解析などを「科学するダジャレ ~地アタマを良くする知的メソッド」という構造解析などをやる連載やっているので気になるはそちらをどうぞ。
そして、ダジャレもそうですが、一般的に“ベタ”と捉えられるものに対し、人々は少なくとも嫌悪感は抱かないと思います。ただし、それはわざと下手に出るということではなく、キチンと相手と同じ目線で、サービス精神という思いやりで喋っているべきだと考えます。

――でも、石黒さんみたいにベテランになると、発注側からむしろ同じ目線になってもらえないんじゃないですか?「先生!」なんて言われて。

僕は仕事相手から「先生」とか言われるのも、言うのも嫌いです。フラットに対峙したいと思うのでずっと上の方でも「さん」と呼ぶようにしています。だって、誰とだって、同じ平らな地面にいたいなぁ、と思うじゃないですか。だから、会話内容とかも含めて、人と会えば、みんなが少しでも楽しくなるように意識しています。
 
僕はある程度腹を割る癖というのはけっこうついているんじゃないかなぁ。『7つの動詞で自分を動かす ~言い訳しない人生の思考法』の第3章・「開ける」で書いたのですが、犬が転がって腹を見せるのと同じで、「私はすべてをあけすけに見せていますよ」「自分を出していますよ」という姿勢を見せることで、相手の話を聞き出せます。本ではこう書きました。「打算や計算がなく、ただひたすら、相手への関心や好奇心をむきだしにして素直に腹を見せる。もっとも大切なことは、そんなオープンハートな心根にあると考えます」

そんな姿勢でい続けていたら、この年まで仕事はずっと続けてこられましたよ。

【石黒謙吾(いしぐろ・けんご)】
著述家・編集者・分類王。1961年金沢市生まれ。これまでプロデュース・編集した書籍は200冊以上。著書に『2択思考』『盲導犬クイールの一生』『ダジャレヌーヴォー』など。プロデュースした書籍には『ザ・マン盆栽』(パラダイス山元)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『ジワジワ来る○○』(片岡K)など。全国キャンディーズ連盟(全キャン連)代表。日本ビアジャーナリスト協会副会長。年間40試合こなす草野球プレーヤー。雑誌編集者時代に、雑誌における女子大生の呼称・「クン」を確立させる。

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