国内

累計2000万本売れたシャープペンシル 通常の2倍の部品を駆使

 クルッと回って自然にトガる。発売後5年で2000万本のメガヒットとなった三菱鉛筆のクルトガ。作家の山下柚実氏が、中高生に爆発的な人気を誇り、海を渡った先でも人気を集めるシャープペンシルの開発ストーリーに迫った。

 * * *
 どんな味がするのだろうか? 食べ物ではない。「書き味」のことだ。  三菱鉛筆の『クルトガ』は、2008年の発売から累計2000万本も売れた革命的シャープペンシル。そう聞いて、いったいどんな書き味なのかと興味津々。

 でも、受験勉強以来、シャープペンにはとんとごぶさたしている私。今日はちょっと高校生気分に戻って、使ってみようか。

 クルトガを手に持って4~5行、文を書いてみる。すらすらと滑らかなタッチだ。さらに書く。書いても書いても……あれ不思議。太くなったり細くなったりのムラがない。書き始めからタッチがまったく変わらないのだ。紙にひっかかって芯がポキッという不快感もない。そう、芯が折れるのがイヤで、私はシャープペンが好きになれなかったんだっけ。

 でも、クルトガ体験で一番驚いたのは、書き味そのものではなかった。あまりにも書くストレスが少ないために、ふと、「シャープペンで書いている」という意識が消え、ただ書く「内容」ばかりに集中していたことだ。

 そんな画期的な筆記感覚を与えてくれる「クルトガ」の中味とは、どんな構造でできているのだろうか。

「常に芯が尖った状態を保つために、軸の先端には小さなギアが3つ入っています」と三菱鉛筆横浜研究開発センター・中山協氏(46)が説明する。

「字を書く時の筆圧によってギアが上下し、芯を少しずつ回転させていく構造です。一画書くたびに9度ずつ芯が回り、減った部分が移動していくわけです」

 クルりと回ってトガる。だから『クルトガ』。筆圧を使ってギアの上下運動を作り出し、その力を回転運動に転換するありそうでなかったメカだ。通常の2倍もの部品を駆使しモノ作りニッポンのお家芸とも言える細やかな工夫を詰め込んだ筆記具。世に出て5年が経つのに、人気も売り上げも衰えていない。

「11月に、専用の替芯を発売したところです。芯の素材となる黒鉛は焼き固めて作るため、通常だと外側が固くなるのですが、この芯は逆。内側が固くて外側が柔らかい構造で、より尖りやすい芯を実現しました」

 1つのブランドに特化した芯を発売するのは世界で初めて、と中山さんは語る。

「細かい字できれいなノートをとりたい」という、日本人特有のこだわりと美学に応えた筆記具は、海を渡った。アメリカでも人気を博しているとか。

「アルファベットの文化圏では、日本人と違って強い筆圧で勢いよく字を書く人が多い。それでも芯が折れにくくて、きれいな線が持続すると高く評価されています」

※SAPIO2013年3月号

トピックス

来る3月、大谷翔平が日本に凱旋
大谷翔平、日テレが生中継する開幕前の壮行試合に“出場拒否”の可能性 依然として尾を引く「新居報道騒動」
女性セブン
けがの前と変わらない立ち姿を披露された美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/JMPA)
美智子さま「杖をつかずに一般参賀に参加」の目標を見事に実現 宮内庁病院は看護師2名の追加採用を決定、“快復のカギ”となるか
女性セブン
450日以上にわたって拘束され続けているリリー・アルバグさん(イスラエル大使館の公式Xより)
《停戦合意を前に19歳女性の人質動画を公開》ハマスが450日にわたり拉致・監禁「性奴隷」と呼ばれ…深刻な肉体的苦痛の実態「もう私たちが知っている彼女ではない…」
NEWSポストセブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
「田原俊彦、植草克秀を収録済み」中居正広『だれかtoなかい』が早期打ち切り危機…空白埋める「毒舌フリーアナ」
NEWSポストセブン
秋篠宮ご一家の動向が注目されている(写真提供/宮内庁)
【原武史氏×河西秀哉氏が見通す2025年の皇室】悠仁さま、愛子さま、佳子さまに重大岐路 皇室改革がなければ「秋篠宮家」一家丸ごと皇籍離脱の可能性も
週刊ポスト
中居正広の女性トラブルに全く触れないテレビ局 
中居正広の深刻トラブルに全く触れないテレビ局 ジャニー氏性加害問題で反省したはずなのに…騒動が風化するのをじっと待つ“不誠実”
女性セブン
2024年12月13日の事始め式では青いストールを巻いて現れた
《六代目山口組・司組長のファッションに注目集まる》原点は「チョイワル」コーディネート、海外高級ブランドを外商で取り寄せ、サングラスは複数用意して全身グッチ
NEWSポストセブン
新年一般参賀では、午前と午後合わせて5回、宮殿のベランダに立たれた(2025年1月、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)
一筋縄ではいかない愛子さまの結婚問題 お相手候補に旧宮家の男系男子を推す声がある一方、天皇陛下が望まれるのは“自然に惹かれ合った形で”
女性セブン
乗客乗員181人のうち179人が死亡するという韓国の旅客機事故で最大の被害となった
韓国機事故で179名が死亡、2人の生存者が座っていた“生還しやすい座席” 相対的には「前方より後方」「窓側より通路側」「非常口付近」
女性セブン
現在
《3児の母親となった小森純》「社会に触れていたい」専業主婦から経営者を選んだ意外な理由、タレント復帰説には「テレビは簡単に出られる世界じゃない」
NEWSポストセブン
サプライズでパフォーマンスを披露した松本(左)と稲葉(「NHK紅白歌合戦」の公式Xより)
B’z紅白初登場「7分54秒の奇跡」が起きるまでの舞台裏 「朝ドラ主題歌以外は好きな曲で」のオファーに“より多くの人が楽しめるように”と2人が選曲
女性セブン
俳優
《第1子男児誕生の仁科克基》「僕は無精子症でした…」明かした男性不妊の苦悩、“心も体も痛い”夫婦で乗り越えた「妊娠18カ月生活」
NEWSポストセブン