深刻さを増している中国の大気汚染問題。九州から北海道まで日本全国への拡散が確認されており、多くの自治体が問題の有害物質「PM2.5」に対する警戒を強めている。そんな中、「食の安全」を揺るがす問題が発覚した。
昨年末、中国国内の養鶏場で、抗生物質などが過剰に投与された“薬漬け鶏肉”や、病死した鶏の肉が出荷されたのではないかという報道が相次いだのだ。
発端は昨年11月、中国のニュースサイト『中国経済網』(11月23日付)が、養鶏大手の「山西粟海」が短期間で急速に成長する品種であるブロイラーに、薬物を過剰に投与していると指摘したこと。その上で、同社が鶏肉を中国国内のマクドナルドやケンタッキー・フライド・チキン(KFC)に供給していると報じたため、大きな騒ぎとなった。
この事件は、山西省農業庁の調査で「基準に合致している」とされて決着。ところが12月18日、今度は国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)が、同じく中国国内のマクドナルドやKFCに鶏肉を出荷している「六和公司」で、違法に薬物が投与されていると報じた。
番組では、隠しカメラを仕込んだ記者が養鶏場の責任者と会話をし、通常なら出荷7日前に薬剤の投与を中止しなければならないものを、前日まで与え続けている様子を取材している。出荷直前まで薬剤を与え続けると、出荷後の鶏肉に薬剤が残り、それを口にした人に悪影響を及ぼしてしまう。
これらは「速成鶏」として中国国内で大きく報じられ、政府は事件にかかわった養鶏場や加工工場の閉鎖を命じて調査する事態となった。
しかも不気味なのは、そうした鶏肉が日本にも入ってきているかもしれないということ。年が明けた1月16日、一部の中国メディアが、日本に向けた焼き鳥・チキンナゲット・から揚げなどの加工品に使う鶏を出荷している「大用食品」でも、病気の鶏肉を食品に転用した疑惑を報道した。
この報道を受ける形で、大用食品と取り引きしている可能性のある企業として、一部のウェブサイトが中国国内のマクドナルド、KFC、吉野家と、日本国内のマクドナルド、KFC、大阪王将の名を挙げるに至った。ただし本誌が各企業を取材すると、
「大用食品との取引はありますが、問題になるような鶏肉は入れていない。当社としてはそもそもあの報道は間違いだったことが確認されています」(日本マクドナルド)
「日本のケンタッキーはすべて国産を使っていて、中国産は使用していません」(日本ケンタッキー・フライド・チキン)
「国内のものも海外のものも非常に厳格な規格を持っていて、商品を扱うに当たっては事前によく確かめております。今回話題になった鶏肉はまったく使用しておりませんのでご安心ください」(吉野家)
「弊社が使用しているのはアメリカ産、ブラジル産の肉で、中国からは一切輸入はしておりません」(大阪王将を運営するイートアンド)
と、いずれも問題はないとの回答だった。
これらについて農民連食品分析センター所長の八田純人さんは他の危険性を指摘する。
「報道にあったような養鶏の仕方は、実は中国では広く行われているんです。ですから、名前を挙げられた企業以外の他のルートに問題が潜んでいる可能性もあります。日本は輸入品に対する検査率が低く、全体の11%ほどしかない。命令検査になって初めて実態がわかることも多いんです」
※女性セブン2013年2月28日号