日本への多大なる影響も懸念される中国の大気汚染。そもそも、その原因はいったい何なのか。中国情勢に詳しいジャーナリストの福島香織さんは言う。
「中国の最高研究機関である中国科学院の専門家の発表によると、北京の大気汚染の大きな原因は車の排気、暖房のために練炭を燃やした排気、工場など外から流れ込んできた汚染で、その他、飲食店から出る排気が近年急増しているとも指摘されています」
中国は近年経済発展がめざましく、北京市内ではこの5年間で車の台数が200万台近く増え、現在約520万台に。道路整備が追いつかないため、慢性的な渋滞で排気ガスが増え続けている。しかも普及しているガソリンも、日本やヨーロッパに比べて質が悪く、より多くの汚染物質を排出することに。それでも北京は中国の他の地域に比べれば、ガソリンの基準が厳しいほうだというから、呆れてしまう。
「2012年春には、中国国内のガソリンに含まれる硫黄分は香港のガソリンの30倍から40倍だというニュースが世間を騒がせました。国内の石油精油所で安価な材料を調合した“なんちゃってガソリン”が流通し、そのせいで各地で自動車が壊れる事件が多発。殺虫剤の原料になっている成分も含まれていることから“殺虫剤ガソリン”などと呼ばれました」(前出・福島さん)
北京五輪の際には市内への車の流入を制限し、工場も郊外に移転させて空気をきれいにしたが、五輪が終われば元の木阿弥。『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館刊)などの著書があるジャーナリストの富坂聰さんは、大気汚染は悪化の一途をたどっていると指摘する。
「車のナンバープレートの末尾の数字によって曜日ごとに走行禁止車を設ける“ナンバー規制”で街中の車を減らそうとすれば、金持ちが2台持つようになるなど、規制の効果はなかなか上がらない。そもそも中国はお題目では厳しい環境基準を持っていますが、それが現実に合わないので、目をつぶらざるをえないのが現状なんです」
さらに、大気汚染の大きな原因のひとつとされているのが、石炭を使った火力発電だ。現地での取材を30年以上も続けるジャーナリストの宮崎正弘さんの話。
「中国の発電量の72%は石炭による火力発電。それも都会のど真ん中にあり、煙突の高さはたった30mしかないので、北京や上海に限らず街はどこも真っ黒です」
※女性セブン2013年2月28日号