財務省が大物OBの「天下り指定席」を奪還するのか、それとも民間からの登用か。安倍政権発足直後から大論争になってきた日銀総裁人事を巡る綱引きは、2月に入ってヒートアップしてきたが、この間、財務省は安倍政権ナンバーツーの麻生太郎・財務相を動かして、「財務省出身者が就任することに問題はない」というアナウンスを繰り返してきた。
財務省は1998年の速水優氏以降、3期15年にわたってOBの総裁就任を逃し、前回の交代時(2008年)には武藤敏郎・元財務事務次官(日銀副総裁)の昇格人事を野党の不同意によって蹴られた屈辱があるだけに、さぞや悲願達成に邁進しているかと思いきや……、
「財務省OBの就任が望ましいことは否定しない。ただ、今回は副総裁ポストを獲得できれば一歩前進。総裁まで取れば風当たりが強くなるし、“総裁は譲った”という姿勢を見せて恩を売り、5年後の交代で総裁ポストが得られればいい」
財務省中堅は余裕綽々の口調でそう語るのだ。それもそのはず、民主党政権崩壊後のドサクサに紛れて、財務省は天下り先を“荒稼ぎ”してきた。総選挙から3日後の昨年12月19日、日本郵政は社長の斎藤次郎氏(元大蔵事務次官)が突然退任を表明し、後任にやはり大蔵省出身の坂篤郎・副社長が昇格した。
「日本郵政はそもそも総務省から公社を経て、株式会社になった。その際に、いったん民間人がトップになったが、4年後の政権交代で大蔵OBの斎藤氏が社長に就任した。後任人事の際にも、民間人起用の意見があったにもかかわらず、政権移行期の権力空白に乗じたたらい回し人事で、財務省がまんまと社長ポストを私物化したわけです」(郵政民営化問題に詳しいジャーナリストの町田徹氏)
日本郵政の報酬規定によると、社長の報酬は「郵政公社当時の総裁と同水準」(日本郵政広報部)だという。公社時代、総裁の年収は4000万円を超えていた。これと同水準とすると、おいしい天下り先だ。
2月上旬には杉本和行・元財務次官の公正取引委員会委員長の起用が国会に提示され、当初は民主党が事前報道ルールを理由に反対姿勢を示したものの、最終的には同意して承認された。この公取委員長の給料も事務次官より高い副大臣級の月額143万4000円(年収約2700万円)だ。
※週刊ポスト2013年3月8日号