2月に東京ディズニーリゾート(TDR)内の「ディズニーアンバサダーホテル」を新装開館し、宿泊施設も圧倒的な人気を誇るオリエンタルランド(OLC)。そして、ついに「夢の国」体験は、テーマパークが隣接していなくても味わえるようになるかもしれない。
OLC子会社でホテル事業を展開するミリアルリゾートホテルズが、千葉県・浦安市の「浦安ブライトンホテル」を筆頭に京都や大阪などでホテルを運営するブライトンコーポレーションを買収すると発表したからだ。
これまで「ラグジュアリーな大人向けホテル」(旅行業者)として定評のあったブライトンだが、2012年3月期は1億円の最終赤字と決して好調とは言い難かった。オフィシャル・パートナーホテルも多いOLCが特定の買収先のひとつに選んだのはなぜなのか。
「ブライトンは親会社がゼネコンの長谷工コーポレーションなので、建物の造りはしっかりしていますし、デザイン力も優れている。そうした評価に加え、京都御所や大阪・中之島公園に程近い好立地にもホテルを構えているため、経営を譲り受けた後も集客力が見込めると考えているのでしょう」(ホテル業界関係者)
特に京都は2014年春に「ザ・リッツ・カールトン」、同年冬には「フォーシーズンズホテル」と続々と外資系ホテルが進出予定で、さらなる観光需要の高まりが期待されている。そこに、ディズニーブランドが勝負する価値は大きい。
もちろん、他ホテルと差別化するためには、ミッキーマウスやミニーマウスといったキャラクターの活用は欠かせないはず。ホテルジャーナリストの村上実氏が解説する。
「アンバサダーホテルも壁一面にミッキーやミニーの絵をあしらった部屋を新設して予約困難なほど人気になっています。何はともあれディズニーファンは根強いし、マーケティングの底力を持っています。シェフ姿のミッキーがレストランにいるだけで、何も説明は要りませんからね」
一方、大阪のホテル事業では、こんな可能性に思いを馳せる人もいる。
「例えば、大阪にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と業務提携をして、ホテル内でキャラクターの暫定的な互換性を持たせてテーマパーク自体の相乗効果を上げる――なんて展開があっても面白いですね」(前出の旅行業者)
ミッキーマウスとスヌーピーの“夢の競演”が実現するかどうかはさておき、OLCが事業領域の幅を浦安から日本各地に広げるメリットは大きい。
「OLCはテーマパーク内で培ったキャストと呼ばれる従業員の高いマネジメントノウハウを持っています。ホスピタリティー溢れる人のサービスがホテル事業を通じて各地に広がれば、さらにディズニーブランド人気も盤石になると思います」(前出・村上氏)
2012年上期(4~9月)の入園者数が過去最高の1325万人と沸いたTDR。関連事業の拡大も相まって、テーマパーク一人勝ち状態はまだまだ続きそうだ。