宗教的儀式や指導者の法話などは、多くは信者だけが参加を許され、メディアに公開されるものは少ない。
昨年末、幸福の科学が、年間を通じた最大のイベント「エル・カンターレ祭」を約20年ぶりにマスコミに公開。そこで見た大川隆法総裁の講演は、驚きの連続だった。
東京・有楽町の東京国際フォーラムホールAの入り口は物々しい雰囲気に包まれていた。衆院選公示翌日の12月5日。19時からの「エル・カンターレ祭」開演を前に、入場する信者らが厳重な手荷物検査を受けていた。
エル・カンターレとは、幸福の科学の信仰の対象で「地球の最高神」のこと。それが現代の日本に下生したのが大川隆法総裁だとされる。信者にとっては年に1度の大イベントで、総裁の肉声を聞くことができる貴重な機会だ。20代と思しき女性ばかりのグループから、若いカップル・中高年夫婦まで、あらゆる層の信者が来場。主催者発表で5500人が詰めかけたという。
「今日の講演は、日本だけではなく全世界3500か所に衛星中継されています」
司会の女性がそう説明する。衛星中継された3500か所の詳細は不明だが、事実だとすれば凄まじい数である。
さて、いよいよ「エル・カンターレ」の登場である。
「では、大川隆法総裁先生、お願いいたします!」
司会がそう告げると、参加者は総立ちで拍手。周囲で座っているのは記者とマスコミ関係者数人だけという異様な雰囲気である。
演題は「地球的正義とは何か」。壮大なテーマの講演は、こんなふうに始まった。
「今日はまさに選挙期間中で、いささか説法しにくい感じですね。『そんな前に立ってないで、車の上で話せ』と言われそうです」
応援演説で全国を飛び回った大川総裁。選挙の動向が気になるようである。大川総裁が言葉を区切るたびに会場は割れんばかりの拍手。信心のないものには理解しにくい光景ではある。締めくくりはこんな具合だった。
「地球の進むべき方向の答えは、すでに私の本の中にある。今年、私は80冊以上の本を出しています。人間の仕事ではないことをぜひ知っておいていただきたいと思います」
「私の指差す方向に地球の未来は必ず拓けていきます!」
そして再びスタンディングオベーションがまきおこったのである。
※SAPIO2013年3月号