近ごろ、箱根で地震が頻発し、地元住民を不安に陥れている。
「ほとんどは震度1以下の体に感じない揺れですが、今年に入って1700回を超える地震が発生しています。また、わずかながら山全体が膨張する“山上がり”という現象も起きています」(神奈川県温泉地学研究所)
2月10日には震度5の地震でロープウエーとゴンドラが停止。強風などによって止まることはあるが、地震による停止は異例だという。しかも揺れは極めて局所的なもので、少し離れた東京や横浜ではまったく観測されていないというのも、何やら不気味だ。
神奈川県温泉地学研究所の担当者は「今すぐ噴火するような兆候は見られません」と言う。が、地震や噴火などの自然災害に詳しいジャーナリストで、これまでに何度も箱根の火山活動を取材している有賀訓さんはこう指摘する。
「大涌谷を歩くと、2年前に来たときよりもガスの噴出がさらに強くなりましたし、噴出している場所が倍ぐらいになっている印象を受けました。噴火兆候はないと発表されていますが、危機管理に必要なのは常に最悪のケースを想定しておくことです。私は最大限の警戒が必要だと思います」
3100年前の箱根山の大噴火以降、箱根で噴火は起こっていないため、文献や統計はまったく残っていない。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀さんは、こう話す。
「例えば北海道の有珠山は、1997年と2003年に噴火しましたが、それ以前にも5回、合わせて7回噴火しています。その記録から、噴火の30時間以内には有感地震が起きていたことがわかっています。しかし、箱根山や富士山にはデータを取り始めてからの記録がありません。火山によって、その噴火の仕方は全く違いますから、今回の地震が噴火の前兆であるかどうか、学問的にはわからないと言わざるを得ないのです」
※女性セブン2013年3月14日号