安倍晋三首相が推進する経済政策・アベノミクスに批判的な記事も賛同する新聞やテレビの報道には、記者の思考停止状態で報じられたものが多すぎると産経新聞特別記者の田村秀男氏は批判する。以下、田村氏の見解だ。
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全国紙、NHKといった大手マスコミはアベノミクスの「危険性」にご執心だ。日本経済新聞の「経済教室」では1月16日付からの連載で「日本売りリスク 目配りを」、「放漫財政、物価高騰も」、「日銀の独立性は重要」、「資産バブル招く可能性も」との見出しが躍った。時の政権の政策批判は結構だが、これまで大手メディアの多くは財務省・日銀の言い分に沿う論調で報道し続けてきた。
しかしアベノミクス批判にもかかわらず、円高是正が始まり、株価も上昇している。世論の支持率も高くなってきた。となると商業メディアとしてはまずい。しかも、処世術にたけた官僚はさっさと面従腹背、表向きだけは安倍政権に同調している。日銀の白川方明総裁が典型だ。
はしごを外された官僚追随メディアは慌てただろうが、自らの誤りを認めたくないという自己保身が働くと同時に、急激な論調の転換は読者の不信を招く。そこでまずとるのが、バランス手法である。
上記の日経経済教室のように、インフレ目標などを1面で大々的に取り上げながらも、中の面でマイナス効果を学者にコメントさせるのである。さらに次の段階ではすり寄って、あたかも以前から脱デフレの論陣を張ってきたような顔をするだろう。
事実、すでに日経などは浜田宏一イェール大学名誉教授など首相指南役にインタビュー攻勢をかけて彼らの言い分をたっぷりと掲載している。
読者をミスリードし、世界史上未曾有のデフレを招いてきた己を省みないメディアは、どこまで読者を冒涜し日本を混迷させるつもりなのか。
※SAPIO2013年3月号