春の新生活シーズンのこの時期、スポーツジムの入会希望者が増えるという。と同時に、退会する人も後を絶たない。確かに、健康のため運動でもしよう、と思ってジムに入会。1、2か月は頑張って通うけれど、次第に行く回数が減っていき、いつの間にか通わなくなってしまう…。そんな経験がある人は少なくないだろう。いったいどうしてジム通いは続かないのだろうか? 続けられる人と続けられない人の違いとは? 心理学者で駒沢女子大学教授の富田隆さんに聞いた。
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基本的に人間は大変なことばかりだとなかなか続けられないんです。ダイエットだって、食欲を抑えて食べたい物も食べれなかったりすると、決して楽しいことではないから途中で挫折してしまう。ジム通いも同じです。健康やダイエットのために通い始めたとして、運動自体が目的ではないから運動することを楽しめず大変だと感じてしまうんです。
手応えを感じにくい、というのもジム通いを続けられない大きな理由です。健康が明らかに増進したとか、体形がスマートになったとか、そういう明確な実感があれば誰だってがんばって続けられるんでしょうけれど、そういったものは短期間ではなかなか感じにくい。忙しくて週に1、2度しかジムに行けない人は余計に実感するのは難しいでしょう。
例えば、テレビゲームや携帯ゲームは何の生産性もないけれど、夢中になる人がいますよね。ひとつのゲームにハマって、ちょっと時間があるとゲームをするというのが習慣化して、電車の中でもピコピコやっている人もいる。なぜ続けられるのかというと、ゲームはスコアが出たり敵を倒したり、手応えを感じられて楽しいからです。ジムの運動ではなかなかこうした手応えを得られないから、途中で通わなくなる人が多いんです。
では、ジム通いを続けているのはどういう人なのか? もちろん、先ほど挙げた健康や体形で明確な改善を感じられた人は続けられるでしょうけれど、それ以外にはジムで別の目的を見つけられた人は継続して通う傾向があるように思います。
例えば、素敵なインストラクターがいて、その人に会うことができる、というのもひとつの目的でしょうし、ジムで友人ができて、行けば友人とおしゃべりができる、というのも目的になると思います。友人と話すことで、運動自体はきつかったとしても楽しい時間を過ごすことができる。ある意味ではその人なりの“手応え”にもなるというわけです。
ジム通いを継続させるには小さなステップを達成したことによる成果を“見える化”する方法があります。心理学でスモールステップの法則と言うのですが、ランニングマシンをやったとしたら、走った距離を、例えばマルセイユからスタートしてパリまで向かうという道のりに換算してみる。そうすることで、“今日は○○市まで着いた。パリまではあと○kmだ”と考えられる。小さなステップにわけると目標を達成しやすいし、それがやりがいにもつながっていくのです。
記録をつけるのも有効です。その日、運動した時間や内容などを毎回、ノートなどにつけると、それが貯まっていきますよね。すると貯まっていくこと自体が楽しくなる。これは、預金通帳を見て貯まった金額を見て思わずニンマリしてしまう、ラジオ体操でスタンプを押してもらうのがうれしくて通う、というのと同じです。記録することで自分が積み重ねてきたことを実感できるから、うれしい気持ちになり継続できるんです。これもジム通いを続けるひとつの方法と言えます。