円安を名目に燃料や食料品の一斉値上げが始まった。だが、その値上げの陰に、既得権者の利権がコッソリ紛れ込んでいるとすれば許し難い。
これから始まるのが確実なパンやパスタなど小麦製品の値上げの裏に税金という甘い汁に群がるシロアリのような官僚たちの暗躍がある。 小麦の場合、国際相場の変動や円安による輸入価格上昇よりずっと大きいのが役所の取り分だ。
日本の小麦の需要量(年間約550万トン)の9割は外国産で、農水省が安い輸入小麦を全量買い取り、「マークアップ」と呼ばれるマージンを1トンにつき17円ほど上乗せして高く製粉会社に販売する国家統制が行なわれている。マークアップとは、1割に満たない国内の小麦農家のために支払われる補助金である。
この補助金と高い関税により、製粉会社への売り渡し価格は国際相場の約2倍になっている。消費者は高いパンや麺などの小麦製品を買わされ、差額は農水省の差配を通じた、生産者への補助金バラマキに化ける。
『月刊農業経営者』副編集長の浅川芳裕氏が指摘する。
「補助金漬けの国産小麦の生産量はわずか74万トンで、生産額は260億円しかない。それなのに補助金の総額は約1300億円にのぼる。生産額の5倍の補助金で農業が強くなるはずがない。
一方で農水省にとっては、この補助金を特別会計にすることで、自分たちの利権にできる。輸入価格に上乗せされる輸入小麦のマージンは、農家の保護というより、役所の利権温存に使われているのです。マークアップがなければ、小麦の値上げは避けられます」
※週刊ポスト2013年3月15日号