中国中央部・山西省の山あいにある武郷という小さな町に『八路軍文化園』という“反日テーマパーク”がある。日中関係の緊張が高まる中、今回、本誌はこの施設へ潜入した。
八路軍とは、日中戦争時に抗日戦争を戦った共産党軍のひとつで、現在の人民解放軍の前身となった軍隊だ。
入場料は30元(約450円)だが、90元(約1350円)払えばショー見放題つきのチケットを購入できるようになっている。
屋外で行なわれている『反掃蕩』というショーが盛り上がりを見せていた。このショーでは約30分のうち20分までが日本兵の“蛮行再現”に費やされた。しかもストーリーは一切なく、日本兵役による残虐シーンばかりをオムニバスで演じられるからたまらない。
女性から赤ん坊を奪い取り、笑みを浮かべながら空中に放り投げ、歩兵銃で射殺。会場には赤ちゃんのオギャア、オギャア、という声が大音量で響き渡る。
続いて、少年を複数で取り囲んで、弄びながら撃ち殺す――誰が見てもひどすぎると思う演出で、会場からはすすり泣きの声も。最後はお決まりのように八路軍が登場して大活躍。日本兵は射殺されたり、旭日旗の描かれたトラックで逃走し、壁に激突するなどして全滅してしまうのだ。
ストーリーもほとんどない、日本兵役による“蛮行”。いったいこれを見て中国人は何を思うのだろうか。
演劇を見終えたばかりの中国人客に感想を聞いた。
「とっても面白かったし、同時に、日本人が本当に憎く思えた。中国の女性をああやって思い通りにしてきたんだと思うと、はらわたが煮えくり返る。アンタたち日本人は南京でどれだけ中国人を殺したと思ってるんだ?」
50代の男性は、話しているうちに高ぶる気持ちを抑えられず詰問口調に。別の60代女性は、「日本の教科書では中国人はどういう人だって書いてあるんだい? 中国の教科書ではアンタら日本人は悪いヤツって書いてあるんだぞ!」と叫びながら、記者の鼻先10センチの至近距離に指を突きつけてきた。
あまりの剣幕といつのまにか集まっていた周囲の中国人からの視線に身の危険を感じ、パークの外に避難せざるを得なかった。
一息ついてからの帰路、近所の公園を通りかかると、人間をかたどった行灯が見えた。よく見ると、緑色の顔をした男が爆弾の下敷きになって苦しんでいるようにも見える。そこに中国人の母子が通りかかる。
「お母さん、これ誰?」
「それはね、小日本よ。うふふふ」
「小日本かぁ。ざまあみろだねぇ」
日本人の知らぬところで今日もまた、反日の芽が育ちつつある。
※週刊ポスト2013年3月15日号