電波の周波数帯は国民の公共財産である。テレビ局はそれを格安の「電波利用料」を支払うだけで占有し、莫大な儲けを手にしている。今回、本誌取材により、従来でも安かった利用料が昨年からさらに減額されていたことがわかった──。
過去に本誌は、テレビ局が格安の利用料で公共の電波を私物化し、放送以外のサイドビジネスで荒稼ぎする実態を暴いてきた。たとえば、情報番組内で自社主催の展覧会やイベント事業、映画などの告知を堂々と行なうといった手法だ。
全国ネットで自社のサイドビジネスを宣伝できるのだから、その集客効果は抜群。実際、フジテレビは『テルマエ・ロマエ』など4本の映画の興行収入で今期は257億円を稼ぎ出した。それは通期の経常利益予想231億円を上回る。
電波をフル活用した宣伝による映画事業収入がなければ、フジは赤字に転落していた可能性さえある。
映画だけではない。1月末まで開催されていたフジテレビ主催の『ツタンカーメン展』は東京と大阪会場合わせて入場者数が208万人を記録した。情報番組内で女子アナが同展を訪れて見所やグッズをこれでもかと紹介するなど、宣伝に努めたおかげだろう。
テレビ通販もおいしい副業だ。日本テレビは115億円、TBS96億円、テレビ朝日75億円、フジテレビ92億円とその売り上げは巨額にのぼる(いずれも2011年度)。
各局とも子会社に自前の通販会社を持つ。独立系の通販会社がテレビの枠を買うとしたら数百万円のコストが余計にかかる一方で、テレビ局傘下の通販会社だけが格安で番組枠を使えるとすれば、独占禁止法に抵触する可能性すらある。
■文/津村雅希(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2013年3月15日号