国際情報

高齢化進む中国 65歳以上に月1万円支給で年間22.2兆円必要

 日本を常にお手本にしてきた中国。だが、彼らが直面する高齢化は、日本を上回るスピードで進行しており、お手本がない。解決策を見つけられないまま、時限爆弾が炸裂しようとしている。中国の将来に何が待ち受けているのか、ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

 * * *
 中国はいま、「2015年問題」をどうやって乗りきるかで頭を悩ませている。「人口紅利」(人口ボーナス)が終焉することで生じる様々な問題のことである。1980年代から中国が五月雨式に導入した一人っ子政策によって少子高齢化は加速しており、総人口に占める生産年齢人口は2015年をピークに減少に転じると予測されている。

 しかも、実際には予測を上回るペースで進行しており、すでに減少しているという指摘さえある。これまで中国は安価な労働力が大量にあることを最大の強みとして経済成長してきた。

 だが、今後はその強みが消える。逆に膨大な数の高齢者によって社会保障費が爆発的に増大し、財政に重くのしかかってくる。すでに60歳以上の人口は1億8500万人おり、日本の総人口を上回る。「未富先老」はすでに現実なのだ。

 これは序章に過ぎない。1950年代のベビーブーム、そして1960年代に毛沢東が推進した多産政策により、ボリュームのある50代、40代がこれから次々とリタイアしていく。

 その一方で、中国の年金制度は脆弱だ。日本の年金に相当する「養老年金保険」はそもそも対象としている人数が少ない。政府は「農民のカバー率90%以上を目指す」と言っているが、実際に中国人に年金制度の有無を尋ねてみると、ほとんどの人が「入っていない」「そんな制度はない」と答える。知っていると答える人も少数いるが、口を揃えて「あてにしていない」と言う。

 2009年に『南方都市報』が報じたところでは、年金制度がカバーしている人口は全体の15%に過ぎないとされる。遅々として進まないのは、社会保障費が莫大になるからだ。

 仮に1億8500万人の老人に月1万円配ったとすると、月1兆8500億円、年間22兆2000億円の予算が必要となる。これまでは多くの国民から税金を徴収することで、莫大な国家予算をまかなってきた。それで空母建造のような無駄遣いもできたわけだが、納税者と社会保障受給者の関係が逆転すれば、際限なく財政負担が増える。

※SAPIO2013年4月号

関連キーワード

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン