日本を常にお手本にしてきた中国。だが、彼らが直面する高齢化は、日本を上回るスピードで進行しており、お手本がない。解決策を見つけられないまま、時限爆弾が炸裂しようとしている。中国の将来に何が待ち受けているのか、ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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中国はいま、「2015年問題」をどうやって乗りきるかで頭を悩ませている。「人口紅利」(人口ボーナス)が終焉することで生じる様々な問題のことである。1980年代から中国が五月雨式に導入した一人っ子政策によって少子高齢化は加速しており、総人口に占める生産年齢人口は2015年をピークに減少に転じると予測されている。
しかも、実際には予測を上回るペースで進行しており、すでに減少しているという指摘さえある。これまで中国は安価な労働力が大量にあることを最大の強みとして経済成長してきた。
だが、今後はその強みが消える。逆に膨大な数の高齢者によって社会保障費が爆発的に増大し、財政に重くのしかかってくる。すでに60歳以上の人口は1億8500万人おり、日本の総人口を上回る。「未富先老」はすでに現実なのだ。
これは序章に過ぎない。1950年代のベビーブーム、そして1960年代に毛沢東が推進した多産政策により、ボリュームのある50代、40代がこれから次々とリタイアしていく。
その一方で、中国の年金制度は脆弱だ。日本の年金に相当する「養老年金保険」はそもそも対象としている人数が少ない。政府は「農民のカバー率90%以上を目指す」と言っているが、実際に中国人に年金制度の有無を尋ねてみると、ほとんどの人が「入っていない」「そんな制度はない」と答える。知っていると答える人も少数いるが、口を揃えて「あてにしていない」と言う。
2009年に『南方都市報』が報じたところでは、年金制度がカバーしている人口は全体の15%に過ぎないとされる。遅々として進まないのは、社会保障費が莫大になるからだ。
仮に1億8500万人の老人に月1万円配ったとすると、月1兆8500億円、年間22兆2000億円の予算が必要となる。これまでは多くの国民から税金を徴収することで、莫大な国家予算をまかなってきた。それで空母建造のような無駄遣いもできたわけだが、納税者と社会保障受給者の関係が逆転すれば、際限なく財政負担が増える。
※SAPIO2013年4月号