引っ越しシーズンたけなわ。進学・就職・人事異動が決まり、慌てて新生活の準備に追われている人も多いだろう。
この時期、どんな引越業者を選べばいいのかが必ず話題になる。費用は少しでも安く、家具類の破損や荷物の紛失など、できるだけトラブルは避けたいと考えるのが消費者の当然の要望だ。見積もり比較サイトや国土交通省の「標準引越運送約款」を参考にすれば、払う予算と受けられるサービス内容、困ったときの対処方法は分かる。
しかし、いくら名の知れた大手引越業者に高額の料金を支払っても、“移動”が滞りなく終わるかどうかは、その日にシフトを組まれた作業員がいかに迅速で丁寧な仕事をするかにかかっている。
「繁忙期ともなると、正直、この家の引っ越しだけはやりたくないと思うことはよくありますね。そんなお客さんは、例え新居の床にキズを付けてしまっても、『家具を置いてしまえば気付かれないだろう』と内緒にして帰ることもあります」(大手引越専門業者社員)
今回、当サイトでは某有名引越業者4人の匿名証言をもとに、「こんな家、こんな客の引っ越しは嫌われる」事例をまとめてみた。
■引っ越し当日なのに何の準備もできていない
最近は家財道具すべてを段ボール詰めからしてくれる「らくらくパック」もあるが、通常、細々したものは自分で梱包しておくのが礼儀だ。「洋服をかけるハンガーBOXも渡してあるのに、洋服ダンスがそのままになっているとゲンナリします」(A氏)。洋服ダンスは入れたまま運ぶとかなりの重量負担になるという。
■搬出、搬入先が狭いのに家電がすべて大型
冷蔵庫やテレビなど家電の大型化が目立つが、引っ越し屋泣かせといえる。「幅の広い観音開きの冷蔵庫が新居のエレベーター、階段ともに通らずに、ロープで吊ってベランダの窓から入れたことがある」(B氏)。
■趣味はガーデニング、植物がやたらと多い
小さな鉢植えならば段ボールに詰めて運ぶことができるが、背の高い観葉植物などはトラック内で平積みできないためにスペースを取られ、荷積みに手間がかかる。また、「移動中に砂がこぼれて後で荷台掃除をするのが大変」(C氏)との声も。
■新築マンションの一斉入居
多所帯が同じ日に入居するため、トラックの駐車スペースやエレベーターは大混雑。「業者別に搬入時間が決められていることも多いが、時間通りに始まった試しがない。深夜までかかったこともある」(D氏)。少しでも早く入居したい気持ちも分かるが、引っ越し日時はずらしたほうが作業も丁寧だという。
■作業員の仕事を逐一「監視」はNG
いくら大事な家財道具を運び出すからといって、いちいち業者の作業に目を光らせていては仕事がやりづらい。「家族一人ずつ部屋の入口に立って見張られていたことがある」(C氏)。
その他、「書斎から何千冊分もの本の段ボールが出てきて疲れ果てた」(A氏)、「4人でも持ち上がらない大理石のテーブルやアンティーク家具がいくつもあった」(C氏)、「搬出が終わり、新居に移動する際に一緒にトラックに乗ってこられるのは困る」(B氏)、「新居で家具の置き場所が決まっておらず、何回も移動を命じられた」(A氏)……などなど、引越業者の愚痴は尽きない。
しかし、「いくら荷物の多い家でも、家人が『ご苦労さま、休憩してください』とお茶を持ってきてくれたり、『これで昼食でも食べてください』とチップを渡されたりすれば、例え少額でも嬉しいもの。頑張ろうという気になります」(D氏)との意見も。
運送業の中でも、引っ越しは人に喜ばれるサービス業の意味合いが強い。業者に気持ちよく仕事をしてもらえるよう、依頼者側も一定の信頼を置き、ちょっとした心配りもしたいところだ。