7月に行なわれる参議院選挙は早くも自民党の圧勝ムードだ。
新聞各紙の世論調査では、参院選比例代表の投票先として、
「自民42% 維新15% 民主9% みんな6%」(朝日・2月16~17日調査)
「自民42% 維新13% 民主7% みんな5%」(読売・2月8~10日調査)
──など、各紙とも自民党が他党にトリプルスコアの大差をつけている。
劣勢の野党側が自民党の参院選圧勝を阻止するには1人区に統一候補を擁立するなどの選挙協力が必要だが、野党共闘は組む前からズタズタになっている。
多くの改選議員を抱える民主党の細野豪志・幹事長は、日本維新の会幹事長の松井一郎・大阪府知事に参院選での共闘を申し入れたが、「政策が合わない限り、参院選を一緒に戦うのは難しい」と一蹴された。それもそのはずで、実は、自民党の菅義偉・官房長官が先手を打って2月中旬に松井氏と会談し、「参院選後の連携」に向けた話し合いを行なっているのだ。
2人区、3人区以上の複数区ではその維新、民主、みんなの党などが2番目、3番目の議席を奪い合うことになる。そうした候補者乱立状態は、自民党にとって大きなチャンスでもある。政治評論家の有馬晴海氏は自民党には1人でも増やすための裏技があると指摘する。
「複数区では、自民党の候補者選考で公認をもらえなかった県議などが無所属で出馬し、維新や民主の候補を抑えて当選する可能性がある。自民党2議席目の“ステルス候補”というわけです。そういう候補を当選後に追加公認して入党させるのは自民党の常套手段。事前にその点は無所属候補に言い含めておくでしょう。
それでも過半数に足りなければ参院選挙が終わった後、自民党は各党からの引き抜きをやるはずです。
また、選挙後に民主党議員が“転がってくる”可能性は高い。今度の選挙では2人区はもちろん、3人区も民主党は厳しい。そこで、あらかじめ一定の票を民主党候補に回すこともあり得るかもしれません。当選の暁には、自民党へ鞍替えするということです」
民主党や維新、みんなの党など第3極はいずれも党内が分裂含みで、“心は早、自民党”の議員が少なくない。それが野党共闘の障害となる悪循環に陥っている。
その結果、野党は議席が全く伸びないばかりか、選挙後は、憲法改正など安倍政権と政策的に共通点が多い維新を先頭に自民党との協調路線に向かい、そうなれば国会に政権批判勢力が消える。
政治ジャーナリストの野上忠興氏が指摘する。
「昨年の総選挙で自民、民主の2大政党制が崩壊し、次の参院選では自民党一強体制が確立する流れです。そうなれば安倍政権は公約の憲法改正に踏み込んでいくでしょう。そのときに公明党との連立解消が問題になる。現在は改正に慎重な公明党がブレーキ役になっているが、いつでも公明党を切ることができる状況になれば、政権に残りたい公明党は自民党に合わせるしかなくなる。
他の政党も同じで、維新、民主、みんなの党といった弱体化した第2党、第3党まで自民党と歩調を合わせれば、国会は重要な役割である政権チェック機能が果たせなくなる。政策の善し悪しではなく、そうした政治状況そのものが議会制民主主義、政党政治の危機です」
※週刊ポスト2013年3月22日号