【書評】『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(安田浩一、山本一郎、中川淳一郎著/宝島社新書/800円・税込)
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〈グーグル検索で「中川淳一郎」と打てば、予測変換に「在日」と出る〉と、中川淳一郎(ネットニュース編集者)が書くように、安田浩一(ジャーナリスト)、山本一郎(ブロガー)、中川はいずれもネット上でネット右翼から激しく攻撃されている。彼ら3人は、「嫌韓」を特徴のひとつとするネット右翼に対する批判を繰り返しているからだ。
本書はその3人の書き下ろし原稿と鼎談からなる。安田は「街に出たネット右翼」と呼ばれる「在特会(在日特権を許さない市民の会)」のメンバーとのやり取りを描き、彼らの心の内実に迫る。安田は忍耐強いが、やり取りは絶望的である。中川は自らが身を置くメディアの現場を説明し、ネット右翼がしばしば持ち出す「マスゴミの反日陰謀論」を一笑に付す。
陰謀論は実に荒唐無稽である。自分の人生が恵まれていないのは在日韓国・朝鮮人が不当、不正に特権を享受しているからであり、マスコミはその「在日」に支配されているというものだ。そして彼らは、ネットに流れる情報によって初めてそうした「真実を知った」と考えている3者が共通して指摘することだ。
馬鹿馬鹿しいと笑うのは簡単だ。だが、「親韓」だとしてネット右翼に抗議された企業の売り上げは落ち、大量の「電凸」(電話による抗議)に悩まされた。その影響力は無視できないところまで拡大している。山本はパネル調査により、ネット右翼の定量分析や海外との比較などを行なっているが、それによると、“ネット右翼予備軍”は最大120万人と推定される。
社会の一角を占めるようになったネット右翼を知る入門書として最適だ。
※SAPIO2013年4月号