リアル店舗に行かなくても食品や日用品が当たり前のように自宅へ届く時代。活況を呈する通信販売市場の中でも、「ネットスーパー」が急速に広まっている。
イトーヨーカ堂やイオンなど大手GMS(総合スーパー)のほか、コンビニエンスストアまで続々とネットスーパーに参入し、その規模はじつに1256億円に及ぶ(富士経済調べ、2012年見込み)。
各社とも取り扱い商品数や販売エリアの拡大を急ぐ中、意外に見落とされがちなのが注文サイトの利便性や見やすさ。「ネットスーパーは利用してみたいけれど、パソコンでは商品が分かりにくいし、注文方法などの操作に不安がある」(60代後半女性)との声は多い。
また、最近ではPCだけでなくスマホ経由での注文にも対応しなければならない。総務省の「情報通信白書」(2012年版)によれば、スマホ通販全体の市場規模はなんと1兆31億円。注文画面がPCより小さい分、スマホ専用サイトを立ち上げるなど、より操作性の向上が求められている。
魅力的なサイト構築で消費者を増やそうとしているのが、2000年よりネットスーパー事業を展開している西友。昨年8月より同社のパートナーになっているのは、あの「モバゲー」で有名なソーシャルゲーム会社のDeNA(ディー・エヌ・エー)だ。
自社でも通販仮想モール「DeNAショッピング」や競売サイト「モバオク」を持つDeNAが西友と組んだ狙いは何なのか。広報担当者に聞いてみた。
――なぜ、西友とインターネット通販事業で提携したのか。
「西友はエブリデー・ロー・プライスの豊富な品揃えがあり、われわれは『モバゲー』『モバオク』などで培ったユーザーインターフェイス、つまりモバイル分野でのサイト操作性や使い心地のノウハウを持っています。両社の強みを持ち寄って、ネットスーパー事業を発展させましょうということです」
――DeNAのノウハウが入ることで、他のネットスーパーサイトとの違いが出たのか。
「ネットスーパーでは一度の購入品数が多いため、購入商品をカゴに入れるときも画面移動なしで、そのまま買い物を続けることができるようにするなど工夫しています。パソコンでは、今何が入っているかカゴの中身を見ながら買い物をすることが可能です。
また、一般的なショッピングサイトのユーザーインターフェイスではさまざまなノウハウを駆使しています。目の動きを追究し、クリックするボタンの色ひとつ取っても使い心地は変わってきます。例えば、『次に進む』ボタンは青が多いのですが、別の色のほうが進みやすいとか。ちなみに、当社のショッピングサイトでは『カートに入れる』ボタンはオレンジが多い」
――自社のショッピングモールと西友のネットスーパーは競合しないのか。
「ネットスーパーの事業主体はあくまで西友。ただ、当社のショッピングモールのライバルである楽天はネットスーパーにも力を入れていますし、EC(電子商取引)事業は他社とも協業しながら、より力を入れていく方針です。そもそもDeNAの『e』はECのE。いまはゲーム事業ばかりが注目されますが、もともとECサービスから始まった会社ですからね」
――では、自社サイトとの連携も考えている?
「そうですね。ゆくゆくは自社のショッピングサイトと西友のネットスーパーのユーザーIDを共通化して、利便性をアップさせようと思っています」
――ネットスーパーの顧客を、モバゲーや無料通話アプリ「comm」に引き寄せる戦略は?
「それは今のところ考えていません」
いまのところモバゲーの課金事業が寄与し、売上高1502億円、営業利益586億円(2012年第3四半期決算)と絶好調なDeNA。だが、「ソーシャルゲームは当たり外れが大きく国内ユーザーの伸びも限定的。ゲーム依存の経営体質からの脱却が急務」(証券アナリスト)との指摘もある。
ますます注目を浴びるEC事業でどれだけ存在感を示し、安定収益に結び付けられるか。他社ネットスーパーとの連携はその試金石ともなろう。