「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供の65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
アメリカのデューク大学の研究者がこんな予測を発表して話題となった。当然、10~20年後には「消える業種」も数多くあると予測されている。激変するビジネスの現場で生き残るためには誰もが変わり続けなければならない時代が到来した。大前研一氏が指摘する。
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2030年に生き残れるグローバル人材になるためには、2つのスキルが必要だ。
1つは「ハードスキル」だ。具体的には会計、財務、マーケティング理論、統計学などビジネスで必要とされる“道具”である。たとえば、企業価値を何通りもの方法で計算したり、いくつかのマーケットの中で最も成功する可能性が高いセグメントをデータから導き出したり、顧客をクラスター分析しながら最も利益率の高い商品を売ったりする技術だ。そのような統計を使った処理は日本の大学でも企業でもほとんど教えていないため、日本人が苦手な分野となっている。
もう1つは「ソフトスキル」だ。民族・国籍・文化・言語・宗教の違う人たちとコミュニケーションをとりながら、ビジネスを円滑に進める能力を指し、もちろん英語力が前提となる。挨拶や説得のほかにも「海外で現地社員を叱咤する」「外国人社員とのミーティングでプロジェクトの進行状況を確認し、誰がいつまでに何をやるかを全員にコミットさせる」「労働問題が起きた時に弁護士に依頼し、解決策を共有する」など様々なケースに柔軟かつ的確に対応できなければならない。
たとえば、現地の社員を怒る時の「怒り方」にもいろいろなレベルがあり、ケースによってニュアンスを変えなければならない。ところが日本人は、TOEIC800点以上でも和文英訳で訓練した人は「I’m angry.」くらいしか出てこないことが多い。
だから私が学長を務めるオンライン大学BBT(ビジネス・ブレークスルー)大学オープンカレッジの「実践ビジネス英語講座」では、怒りの度合いを音楽の強弱の記号にたとえて「ピアニッシモ」「ピアノ」「メゾピアノ」「メゾフォルテ」「フォルテ」「フォルテッシモ」の6 段階で英語でのニュアンスの違いを教えている。
そうした能力は、今後ますます注目されるダイバーシティ・マネジメント(社員の多様性を競争優位につなげる経営戦略)で必須になるだろう。
※SAPIO2013年4月号