本業以外にラクな仕事で高収入を得られたら……。そんな“おいしい副業”への憧れを抱いているサラリーマンは多いはず。
いまはアイデアとスキル、そしてネット環境さえ整っていれば、たとえスマホからでも仕事の契約、納品、報酬の決済まで完結できる時代だ。群衆(クラウド)に業務の一部を外部委託(アウトソーシング)する、いわゆる「クラウドソーシング」市場が盛り上がりを見せている。
クラウドソーシングのサービスを提供するランサーズ(神奈川県鎌倉市)によると、国内主要4社の利用者数は40万人を超え、業界全体の市場規模は約200億円まで膨れ上がっているという。今年に入り、ヤフーがクラウドソーシング企業2社と連携して専用サイトを立ち上げたことでも話題を呼んだ。
クラウドソーシングは、仕事を依頼するクライアント(発注者)とランサー(受注者)双方に利点がある。
「企業が業務を外注する際に、会社ではなく優秀な個人に直接依頼したほうが品質の高い仕事を低コストで外注できる。また、受注者はこれまで自分のスキルや能力を活かしたくても都市部以外に住んでいるため、なかなか実業に結び付かない現実がありました。そこで時間や場所にとらわれないクラウドソーシングが注目され出したのです」(ランサーズ広報担当者)
気になる仕事の中身は、デザインやシステム開発など専門性の高い依頼も多いが、中には、ふと思いついたアイデアや決まった作業を継続して続けるだけで高い報酬を得られる案件もある。過去、ランサーズで募集のあったユニーク業務と依頼金額の例を公開しよう。
■べトナムと日本を繋ぐビジネスアイデア(3万6000円)
■立ち食い寿司店の客呼びコンセプト(3万6000円)
■小さなイタリアンバール(カフェ)の店名募集(4万円)
■学生服屋の看板のキャッチコピー(1万円)
■webカメラによる監視(5000円~5万円)
ビジネスアイデア系や<ネーミング系>は、一瞬のひらめきがモノを言う。ちなみに、イタリアンバールの店名は、昔話「アトリの鐘(The Bell of Atri)」から命名した「葡萄の葉」が採用。学生服店のキャッチコピーは、「笑顔、桜の開花、店の制服」が直観的にイメージできるとの選定理由で「○○の制服で笑顔も満開」に決まった。
さらに、決まった時間にwebカメラの画像を監視して誰もいないかチェックしたり、テレビ録画の代行やオークション出品の配送代行を請け負ったりする<業務代行系>は、特別なノウハウがなくても誰にでもできる仕事といえる。
現在、ランサーズは約70種類、63億3000万円の企業案件と12万6000人の会員数を繋ぐクラウドソーシング事業に特化しており、中にはネット経由の業務請負だけで年収700~800万円も稼ぐ“つわもの”までいるという。
ただし、ネット副業で本業を凌ぐほどの年収を得るのは、そう容易いことではない。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が話す。
「企業の新サービスや商品に関するマーケティングに使われるアイデア募集などは、1本数百円と、とても副収入とはいえない安い仕事が多い。企業側としても、ネットで受発注する一過性の仕事で主体的にビジネスに関わられても困るという意識があるのです。今後は仕事の内容や専門性に応じて適正な対価を支払うような仕組みにならなければ、クラウドソーシング市場全体のさらなる活性化も望めません」
やはり片手間で稼げるほど人生は甘くない。とはいえ、自分のアイデアや能力を広く社会に試せるのがクラウドソーシングの真骨頂。さまざまな可能性を夢見て会員登録しておくのも悪くないのでは。