北朝鮮の核実験が世界中から非難されている。だが、世界で初めて化学法によるウラン濃縮に成功し、日本原子力学会平和利用特賞を受賞した、中部大学教授の武田邦彦氏(工学博士)によれば、「日本も核爆弾を保有しているのと同じ」だという。新刊『武田教授の眠れない講義 「正しい」とは何か?』(小学館)を上梓したばかりの武田氏が解説する。
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いまでは、原爆の作り方が公開されたも同然ですから、濃縮ウランやプルトニウムさえ手に入れれば、作るのは簡単なのです。ということは、日本でも簡単にできるということです。こんなことを言うと、「日本には軽水炉しかないじゃないか」と反論する方がいます。だから「日本では原爆は作れない」と。
確かに日本の原発のすべてが、軽水炉です、原発は、重水炉や黒鉛炉などいろいろな方式があるのですが、これまで「軽水炉ではプルトニウムを生成しづらく、核兵器開発への転用は難しい」と言われていました。すでに核を保有しているインドも、いま問題になっているイランも、重水炉から原爆を作ろうとしています。とはいえ軽水炉だから原爆が作れないなんて、専門家は口にしません。なぜなら、そんなこと、とうの昔に技術的に克服してしまっているのですから。
実際にシミュレーションしてみましょう。まず、原子力発電所を電力生産用ではなく、プルトニウム生産用に切り替えます。これはすぐにできます。そして燃やした燃料棒を、青森の六ヶ所村にある六ヶ所再処理工場に持っていきます。実は六ヶ所再処理工場では、プルトニウムだけ抽出できるようになっているのです。あとは、それを爆弾にすればいいのですから簡単です。
イランが重水炉を持ったからと非難されるぐらいです。日本も世界から見たら「いつでも核武装できる」と思われているのです。日本人は、「非核三原則」を信じていますが、外国から見れば、おそらく、すでに日本は「核武装した国」なのです。
では、日本はいったいいくつ「核爆弾」を保有しているといえるでしょうか。北朝鮮の原子炉は、日本の原子炉の規模の約30分の1です。それを2基保有し、10発程度の核爆弾を作ったとされています。日本は約50基(福島第一原発1~4号機以外)の原発を有していますから、その能力で考えていくと、だいたい2000発はゆうに持てます。
要するに、核を持つか持たないかということは、装置で決まっているのではないのです。その国の「意志」で決まります。何を「正しい」と考えるか、そこだけの差ですね。
※武田邦彦/著『武田教授の眠れない講義 「正しい」とは何か?』より