「正直、あまり期待していないで読んだのですが、本当に感動しました。金子さんとぼくは同年代で、重ね合わせてしまうところもありました」
流通ジャーナリスト・金子哲雄さんの遺作『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(小学館)についてそう話すのは、紀伊國屋書店梅田本店の百々典孝課長(42才)だ。「1日20~30冊くらい売れる日が3か月以上続いている。珍しいことです」と続ける。
発売後はビジネス書コーナーで売れた。その後、雑誌売り場の近くにも並べると、女性の購入者も増えたという。
実際に読んだかたの反響は大きく、編集部に届いた読者葉書は1300通を超える。
金子さんを支え続けた妻・稚子さんは、同書の「あとがき」で、金子さんの最期を克明に書き記すことに葛藤があったと述べている。だがその末に、稚子さんは、夫婦で過ごしたその日までの経緯を紹介することが、金子さんの希望であると考えて、公開を決断した。
<(危篤状態に陥った)8月22日以降、実際、金子の夢枕には、たびたびお迎えが来ていたようです。私でもその気配を感じることができました。生と死の狭間を漂う金子に寄り添いながら、この頃は毎晩、不思議な体験を静かに共有していました。
金子が、「最後に本を出したい」と言い出したのは、この頃です。「肺カルチノイド」という病気があることを広めて、自分のような人間を減らしたいという思いもあったようです。自分の死に方を書くことにも意味があるんじゃないか、とも言っていました。何よりも、本を通じて、皆さんに感謝したい、とも。
本という目標ができたことで、金子の中に、張りが戻ってきました。そういう意味では、この本のおかげで、金子の寿命を少しだけ延ばしてもらえたのかもしれません>(「あとがき」より)
金子さんが生前、医師たちから、こんな状態で執筆するとは信じられないと言われながら残したメッセージは、今日も多くの人々に届いている。
※女性セブン2013年4月4日号