「弱者を守ろう!」という美辞麗句で規制が強化され、逆に当事者を困らせることがこの国ではよくある。まさに“おバカ規制”であり、現場の実態を知らない政治家や役人が圧力団体や利権屋に引きずられた結果、問題はさらに深刻になる。派遣労働者を巡る規制は、その典型例だと、政策工房社長の原英史氏は訴える。
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新年度を機に、学生も社会人も新たな環境に身を投じる人が多い。そんな時期にあたる3~4月は引っ越し業界の書き入れ時だ。
全国引越専門協同組合のデータによれば、3月と4月の引っ越し件数は他の月の2~3倍となる。年間の引っ越しの3割以上がこの2か月間に集中するのだから、まさに猫の手も借りたい繁忙期である。
そんな引っ越しシーズンを前に、今年は多くの業者が人手の確保に苦労している。全日本トラック協会の広報担当者はこう語る。
「いくら忙しいと言っても3~4月だけ社員を増やすわけにはいきませんから、これまでは『日雇い派遣』で人手を確保してきました。しかし去年の労働者派遣法の改正で、『30日以内の日雇い派遣の原則禁止』が定められてしまったため、どうやって人手を集めるか頭を抱えている業者が少なくないのです」
程度の差こそあれ、どんな仕事にも繁忙期と閑散期が存在する。引っ越し業界のように極端な場合は、忙しい時期の仕事量に合わせて正社員を増やせば、閑散期に多くの社員が暇を持て余す状況になってしまう。ビジネスの世界に少しでも足を踏み入れたことのある者なら当然わかることだ。
前出の全日本トラック協会の広報担当者は3~4月の乗り切り方についてこう語る。
「人員確保には、日雇い派遣の例外である学生の派遣を求めるぐらいしか方法がなくなりました。30日以上なら日雇いに該当しないので、従来通り派遣のかたちを使えるのですが、引っ越しは曜日によって波があり、30日以上ずっと派遣を受け入れられるかというと必ずしもそうはいかない。
アルバイトを雇うのも手ですが、一人ひとりと雇用契約を結ぶなどの手続きや支払い事務が必要になり、しかも大人数を雇うのでその手間が大きな負担になります」
※SAPIO2013年4月号