円安が一気に進み、アベノミクスに強い反発を示すのが韓国だ。実は技術力がなく、ウォン安が最大の武器だった彼らは今、焦りに焦っている。ジャーナリストの室谷克実氏が、アベノミクスで崩壊寸前の韓流ビジネスモデルについて解説する。
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「脱デフレ」「円高是正」を掲げるアベノミクスは、図らずも韓国経済が“砂上の楼閣”であることを炙り出すだろう。韓国メディアは、今はまだアベノミクスについて「日本の右傾化の象徴である」などと感情的でピントの外れた論評をするだけだが、実質的な影響を受けるのはこれからだ。
これまでの韓国の躍進は、いわゆるリバースエンジニアリング、つまり売れている先行商品を分解・解析してコピーし、より廉価で販売するというビジネスモデルで成立していた。一番の“お手本”を提供していたのは日本だから、エレクトロニクス(サムスン、LG)や自動車(現代)といった韓国企業の得意分野は、日本企業のそれとぴったり重複する。円安で日本メーカーが価格競争力を取り戻せば、韓国経済を支えたそれらの業種に大打撃を与える。
また、アップルがサムスンを訴えたように、パクリ製品には世界から厳しい目が向けられるようになった。特許権侵害には莫大な賠償の支払い命令が下されるケースが増えており、“パクリ商法”は割に合わなくなりつつある。
危機感を覚えた韓国企業が方針転換し、技術革新を起こして競争力を高めようにも、生産現場を担うブルーカラーの人手不足が深刻だ。現代重工業のような韓国を代表する大企業が、賃金も他の中小企業のブルーカラーとは比べ物にならないほどの好待遇で社員を募集しているのに、若い労働者が集まらず定年延長で急場を凌ぐ事態に陥っている。「現場軽視」の国民意識が遠因になっていると考えられる。
※SAPIO2013年4月号