婚活ブームのなか、社内合コンやパーティで交際のきっかけを作るだけでなく、企業の方針として明確に「社内結婚の推進」を掲げている企業もある。
広島県東広島市の精米機メーカー大手・サタケでは、2010年に定めた「仕事と家庭の両立支援計画」の中で、家族手当の増額や育児時短勤務の拡大と並んで「社内結婚の推奨」を打ち出した。同社人事部長の木谷博郁氏が語る。
「当社は出産、育児で退職する女性社員は少ないのですが、それでも辞めていく理由のうちでもっとも多かったのが結婚でした。交際男性が東京や大阪勤務の場合、遠距離恋愛していた女性が退社してしまうのです。
社長が『せっかく育った社員が辞めていくのはもったいない。社内結婚なら一緒に働けるのに』と言い、会社として社内結婚を推進・支援しようということになりました」
社内結婚したカップルには、自社製品の家庭用精米機(3万5000円相当)をプレゼント、本社にある保育室の保育料の5%割引などの支援がある。方針策定後にまとまった社内結婚は3組。そのうち1組が平松真次さん(28)、彩さん(28)夫妻だ。夫の真次さんが語る。
「会社全体で社内恋愛・社内結婚しやすい雰囲気が醸成されていると思います。子供が生まれたので、保育室の割引制度も活用したいですね」
焼き肉のタレなどで有名な日本食研(愛媛県今治市)は、以前から社内結婚がしやすい環境を整えてきた。『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)の共著者でジャーナリストの白河桃子氏によれば、「同社は約30年前から、『結婚を含め社員が仲良くなることは、団結心が増し、生産性も上がる』という考え方で、社内恋愛や社内結婚を推奨している」という。
愛媛本社内にはそういった風土作りの一環として建立された「社内結婚神社」がある。社内結婚を全社として歓迎することで、夫婦ともども結婚後も仲良く勤めてほしいとの思いが込められている。これまで500組以上の社内結婚カップルが誕生しているという。
※SAPIO2013年4月号