アベノミクスに負けてられないとばかりに、麻生太郎・財務相の肝煎りで新たな景気刺激策が生まれた。2013年度から施行される税制改正大綱に盛り込まれたのが、交際費課税の軽減策、すなわち“接待減税”だ。対象となるのは、日本企業の9割以上(事業所数)を占める中小企業である。
現行の接待交際費は、中小企業(資本金1億円以下)は年600万円まで、支払った額の90%までしか損金に算入できなかった。これが4月からは、景気対策と中小企業を支援する名目で、800万円までの交際費全額が損金算入できることとなった。つまり、800万円までは売り上げから差し引き、法人税を少なくできるのだ。
麻生財務相は3月8日の予算委員会で、「現場を知っている人間からいえば、商店街や繁華街など地方の街が疲弊した一番の理由は交際費課税だ。撤廃されてしかるべきだ」と自身の手柄を強調した。そもそも現行の600万円という上限額も、麻生氏が首相の座にあった2009年に、年400万円から引き上げられて実現したものだった。
交際費課税は1954年から段階的に強化され、1982年には大企業の交際費が全額課税対象とされたが、バブル崩壊以降、交際費の先細りが景気悪化に結びついているとの批判から、緩和が検討され始めた。麻生氏を経済企画庁長官時代から知る財務省OBで弁護士の志賀櫻氏はいう。
「人間の活力を引き出す政策をすべきというのが麻生さんの持論。上限額の引き上げについてもその一環ではないかと思います」
会社の金で取引先とパーッと飲んで騒いで景気回復。麻生グループの社長、若手経済人が集う日本青年会議所(JC)の会頭を務めた麻生氏らしい政策であり、これが「アソウノミクス」と称される所以である。
これによる経済効果はいかほどか。税制改正大綱に挙げられている減税額は年間350億円と見込まれている。中小企業の法人税率25.5%(所得800万円超)から換算すると、アソウノミクスによる交際費の増加分は年間1370億円と算出される。
すでに業界では歓迎の声が上がっている。中小企業経営者向け業界紙『月刊 社長のミカタ』(2013年2月28日付)は、「税制改正や国土強靱化が後押し? 交際費をじゃんじゃん使いたい!」と1面トップで大見出しを掲げ、アソウノミクスを評価している。
さらに2月18日の衆院予算委員会で麻生財務相は、同様の税制を「大企業に広げていくのは方向として考えられてしかるべき」と述べ、現在は交際費の損金算入が原則認められていない大企業でも、交際費を損金処理できるよう検討することを明言した。大企業でも“接待減税”が実現する可能性があるのだ。
※週刊ポスト2013年4月12日号