震災瓦礫の広域処理を巡る税金の使途は呆れるほかない。国は“入札”を検討しただけで受注もしていない相手に総額336億円の拠出を決め、うち約176億円が実際に支払われた。
瓦礫処理を「やる」と検討しただけで巨額の交付金をせしめた自治体側にすれば、“やるやる詐欺”まがいの手法で復興予算を騙し取ったことがバレた。さぞや慌てて平身低頭するかと思いきや、どうも違うのである。
復興予算から総額約86億円を交付された大阪・堺市廃棄物政策課の回答は興味深い。
「当市のゴミ焼却場は震災前の2010年度から建設が始まっており、建設費の半分を一般会計の交付金を財源として整備する計画でした。ところが、昨年の3月に環境省から大阪府を通じて、“復興特会からの補助金に切り替えれば建設費を全額国が出す”という打診があった。
当市は“一般会計のままで結構です”と回答したのですが、4月には“復興予算を充てることにした”と内示されたのです。堺市は瓦礫受け入れを検討していませんでしたが、大阪府が受け入れを表明した結果、(処理可能な施設を建設中の)当市に交付されることになった」
環境省が補助金を押し付けてきたというのだ。総額約36億円の交付を受けた埼玉・川口市に取材しても同様の説明だった。
「当初は焼却場の改修費を一般会計の交付金でまかなう計画でした。そこに環境省が“復興特会の補助金をもらってくれ”といってきて、要請を断わればどちらも受け取れなくなるかもしれないという不安からその通りにしました。瓦礫の受け入れは検討していましたが、環境省から“見合わせることになった”と連絡がきたんです。
国からもらえる補助金の総額が数億円増えたのは事実ですが、当市が復興予算を騙し取ったと思われるのは心外です」(環境施設課)
困惑の色を隠せないのは、神奈川県の秦野市伊勢原市環境衛生組合(共有するゴミ処理場を管轄する2市の事務組合)だ。同組合と平塚市、逗子市、厚木市の4団体には、神奈川県を通じて約160億円の交付が決まっていた。ところが、そもそも4団体は神奈川県に「瓦礫を受け入れない」と表明していたという。
「瓦礫は受け入れないと表明したから、焼却炉の建設費は当初の計画通り半分を一般会計から交付されるものと考えていました。ところが、なぜか環境省から“復興予算の補助金が決まった”と連絡があった。不思議に思っているところに、共同通信が“受け入れ拒否の自治体に復興予算が交付される”とわれわれが悪いように報道したから寝耳に水の話でした」(環境施設課)
こちらは断わっても環境省が勝手に復興予算を置いていったというのである。
環境省は神奈川の4団体については復興予算の交付決定を取り消した。だが、他の全国10団体は「受け入れをしないにもかかわらず、復興予算を受け取る」という状態が続いている。
こうして各自治体の言い分を聞くと、「自治体が復興予算に群がった」のではなく、環境省側が「復興予算への切り替えを自治体に強要して補助金をバラ撒いた」という構図が浮かび上がる。「カラ交付金」の問題の根は、そこにあるのだ。
環境省の奇妙な行動の原因は、瓦礫量の「大幅な減少」にあった。環境省は「総量がわからない中で仕方なかった」と説明したが、それを額面通りに信じるわけにはいかない。
2001年発足と歴史が浅く、霞が関では「新参者」扱いの環境省にとって、東日本大震災と原発事故は、自らの存在意義を世に示す重要な機会となった。それは、官僚流の生臭い言い方をするなら、「巨額の予算を獲得するチャンス」ということでもある。
事実、震災前に2000億円規模だった同省の予算は、震災後、瓦礫処理のための復興予算約1兆円が加えられて一挙に6倍に膨張し、1300人の小所帯は震災1年後の2012年1月に200人以上も増員された。
※週刊ポスト2013年4月12日号