従軍慰安婦問題は、戦後、朝日新聞が主導し、当時の政府が具体的な証拠がないまま「軍の強制連行」を認めたが、その後、多くの歴史家の調査でその事実は否定されている。性的奴隷20万人という数字もあまりに荒唐無稽だ。しかし、このような誤った歴史認識が米自治体が認定したあたかも“既定事実”として独り歩きしている。
現在、慰安婦の碑はカリフォルニア州のものを含め4か所に建てられているが、今後全米で20か所ほど設置する計画があるという。
全米各地で慰安婦碑建設が進む中、ニューヨーク州議会上院は今年1月、人道に対する罪だとして慰安婦たちの尊厳をたたえるという決議を全会一致で採択。3月21日にはニュージャージー州議会下院が日本政府に慰安婦への歴史的責任を認めるよう求める決議を全会一致で採択した。
3月20日には、ニューヨーク州の韓国人市民団体である韓米公共政策委員会(KAPAC)が、ナッソー郡所有のホロコースト記念館に「慰安婦特別展示館」を作り、今秋にも公開する予定と発表、ミシガン州デトロイトでは慰安婦を象徴する少女像の建立が進められているという。
また3月22日には韓国人歌手のキム・ジャンフンがニュージャージー州に「慰安婦館」を建てる計画をブログで発表した。ジャンフンは昨年秋、マンハッタンの繁華街タイムズスクエアに日本に慰安婦問題の謝罪を求める巨大看板を3か月にわたり設置した中心人物である。
韓国系米国人は約170万人で、米国全体でみれば0.6%に過ぎない。しかし韓国系市民団体の活動は活発化する一方だ。韓国系アメリカ人有権者協議会(KAVC)のキム・ドンソク常任理事は昨年、韓国メディアの取材に「アメリカ社会に日本の隠された実体を暴露することは、長期的には東海(日本海)と独島(竹島)問題の解決につながる。来年には慰安婦教育を全米の中・高等学校に普及させる」と述べている。
日本人の知らぬ間に、米国人が、事実認識や慰安婦問題の争点を知る由もなく、自ずと反日感情を抱くよう誘導されている現実がそこにはある。
安倍首相は戦後70年の節目となる2015年に、慰安婦問題に関する新たな談話を発表する意向だ。事実上の強制だという「河野談話」にかわり、具体的な強制はなかったとの新たな見解を示したいというが、果たして……。
撮影■太田真三 取材・文■武末幸繁
※週刊ポスト2013年4月12日号