女子選手への体罰、パワーハラスメントに端を発する全日本柔道連盟(全柔連)の不祥事は、日本スポーツ振興センターの助成金不正受給騒動へと発展し、底なしの広がりを見せる。それでも上村春樹会長以下、執行部は全員留任。責任の所在は曖昧にされたままだ。
そして、今は明治大派や東海大派による「学閥」による派閥抗争も存在する。危機感を覚えた全柔連の現役幹部が、自浄作用を失った組織の実態を本誌に独占告白した。
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パワハラ問題で辞任した園田隆二・前全日本女子監督は明大卒で上村会長の子飼いです。それでも会長を辞めさせられなかった理由は問題になっている助成金のバラマキにあります。
助成の対象者は日本オリンピック委員会(JOC)が決め、年間120万円が個人口座に振り込まれます。2012年度、全柔連で助成を受けたのは47人でした。そのなかに指導していないのに助成金を受けた理事がいた。1人は公にも不正受給を認めて辞任しましたが、実は不正が疑われる者は、20人近くいるのです。
なぜ指導者でもない理事に助成金を与えたのか。それは派閥を維持するためです。派閥領袖の政治家が所属議員に「もち代」を渡すのと一緒。受け取った理事は運命共同体なので、今回も上村会長に辞任を求める声を上げられなかった。実際、不正受給した者の大半が上村さんを支持する立場だと思います。
また、助成金120万円のうち40万円を全柔連にバックする慣例も問題視されました。バックされた資金の口座は強化委員長が管理し、親睦会費や海外団体との交流、接待などに使われていました。問題が発覚したとき、上村さんが「全柔連の口座ではなかったのでわからなかった」と、人ごとのようにいっていましたが、無責任極まりない。
強化委員会は、前委員長の吉村和郎・前強化担当理事を含め、上村会長が任命していました。そもそも、上村会長はこの1月までJOCの強化本部長として助成受給者の審査にあたっていた。見抜けなかったでは済みません。
それら不正受給の情報は非主流派の東海大閥から流れたといわれています。佐藤宣践副会長周辺にルートがあるスポーツ紙がスクープしたからです。
騒動で指導者の助成金が凍結されたことは自業自得ですが、選手まで白い目で見られ、指導を受けるのに支障をきたすのはかわいそうです。今の幹部の関心は自分たちの地位とカネと名誉だけです。執行部は全員退陣し、学閥も、派閥もすべて無くし、一からスタートするしかありません。
※週刊ポスト2013年4月12日号