ニューヨーク・タイムズ3月5日付に掲載された、「カムホーム、アメリカ」と題した大型論文が話題を呼んでいる。日本とドイツの駐留米軍の撤退を検討すべきでないかとするものだが、実は最近の米国では、同様の論調が相次いでいる。
1月28日付フォーブス誌ウェブ版では、米ケイトー研究所のダグ・バンダウ上席研究員が尖閣問題について、
「米国に領有権の主張を保証させることで米国をリスクあるポジションに置こうとする日本政府からの手招きを拒絶すべきだ」
と指摘。さらに「米国は同盟国、特に日本を無力な依存者のように扱うのをやめるべきだ。太平洋の米軍について議論するより、米国は防衛責任を日本に戻し始めるべきだ」とまで言い放った。
相次ぐ「撤退論」の背景は何なのか。産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏が語る。
「財政危機にある米国では、民主党オバマ政権が軍事に消極的となり、かつ二国間同盟より多国間での取り組みにシフトしている。一方で、日米同盟を重視してきた共和党議員からも伝統的なモンロー主義(対外孤立主義)に基づく撤退論が浮上し、保守・リベラルの両極で一つの潮流となっています。
同盟維持派が主流なのは変わらないが、『米国が尖閣を守る』という日本側が望むはっきりしたサインを出さないことを考えても、できるだけ負担を軽減したいという米国側の意思は強まっていると思います」
撤退を唱えるのは政府や政治家ばかりではない。2011年2月には、米世論調査会社のリサーチで、「米有権者の48%が在日米軍を撤退させるべきだと考えている」という調査結果が出た。
安倍政権が辺野古移設の舞台を整えたとき、米軍がすでに日本から消えている──安易な親米路線が赤っ恥をかく日が来るのかもしれない。
※週刊ポスト2013円4月12日号