3月末で終了した「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」は、銀行など金融機関に対し、資金繰りに苦しむ中小企業の返済猶予に応じるよう求めた時限立法だった。
実はこの法律が、中小企業への融資だけでなく、個人向け住宅ローンの返済猶予も対象としていたことはあまり知られていない。この法律によって景気悪化に伴う賃下げや失業、病気などの理由で返済に窮する債務者に対して、元金返済はひとまず置いておいて、利息分だけを支払えばいいという返済猶予が進んだ。その結果、2009年の施行から昨年9月末までの累計の返済猶予額は約3兆6000億円に上るとされている。
その期限が切れればどうなるかは推して知るべしだろう。ただでさえ返済に苦しんでいた債務者が元の金額を払い続けることなどできないのは必至の情勢だ。
しかも、これは期限が切れた4月以降の話ではない。すでに3月末を待たずに“取り立て”は始まっていた。
首都圏在住の50代男性会社員の話だ。
「かつて証券会社に勤めていた時に一戸建てのマイホームを買ったのですが、リーマンショックの影響でリストラに遭い、どうにか再就職できたものの、年収は4分の1まで激減。月々の返済は月17万円ほどでしたが、この3年ほどは支払猶予で月8万円まで減額してもらい、どうにか返してきました」
ところが、年明けに猶予期間の延長を銀行に申し込んだところ、「金融円滑化法の期限が切れる3月をまたいで延長することはできない」などと断わられた。「3月から返済額は元通りになってしまい、とても払えません」と頭を抱える。
同じく首都圏在住の40代会社員も切実である。
「15年前に父と共同で親子ローンを組んだが、8年前に父が病気になり、それからは月16万円を1人で払ってきました。それが支払猶予で月6万円ほどに減り、どうにかやってこられたのですが、その期限も切れ、3月から一気に支払額が増えました。子どもの進学も控えて教育費もかさむというのに、いったいどうしたらいいのか。途方に暮れています」
※週刊ポスト2013年4月19日号