「日本の女性が韓流男に走る理由は、エロくて性欲を刺激されるから」
「フジTVデモはブス男のひがみ」
2011年9月、インタビューでこう語ったことでバッシングを受けた文筆家の北原みのりさんが、今年2月に『さよなら、韓流』(河出書房新社)という本を出版した。鍛え磨かれた肉体に、セックスを彷彿させるダンスパフォーマンス。そしてとびきりの笑顔で「ご飯食べましたか?」と語りかける韓流スター達にエロティシズムを感じ、欲望の対象として追いかけ続けてきた彼女が、なぜ韓流との決別宣言とも思われる本を書いたのか。「さよなら」の理由を、北原さん自身に語っていただきました。(聞き手=朴 順梨)
当初予定していたタイトルは『韓流女はエロである』。しかし全く違う方向で落ち着いた。それはどうしてなのだろう?
北原:韓流ってビジネスや音楽論で語られるものは多いんですけど、女の欲望から語られたものがなかったから、それを言葉にしたい思いがありました。最初は軽く、楽しく「韓流ってエロよ~!」という気分だったのですが、書き進めるうちに、だんだん重々しい気持ちになってしまいました。
それはやはり、韓流叩きの声がどんどん大きくなっていったから。政治批判というよりは、韓流や韓流にはまる女叩きのような声に聞こえました。「あのスターの腹筋が凄い」と言ってるだけで、「韓流おばさん、竹島のことを考えてますか?」とか真顔に言うような男が増えてきている。正義を背負って女を叩く。非常に怖いと思いました。そんな空気の中で、闘うような気分で文章を書くのは、非常に辛くて、執筆に2年近くかかってしまいました(苦笑)。
同書には臨床心理士の信田さよ子さんや東京経済大学准教授の澁谷知美さんなど、8名の女性(うち1名は“オカマ”の少年アヤちゃん)との対談も収録。韓流女子トークを繰り広げている。そんななかで異彩を放っているのが、「韓流にはまる女たちの不愉快さ」に言及する、社会学者の上野千鶴子さんだ。
「日本の女は、(韓国の男を欲望の対象として)隣国に土足で踏み込んで強姦した。その背後にあるのは、植民地時代からの優劣関係の記憶」だとバッサリ。さらに日本人は長年持ち続けてきた、「朝鮮半島に対する差別意識」から逃れられないとも語っている。
北原:私の世代は、日本の方が全てにおいて先を行っている、という意識があった最後の世代じゃないですか? 興味を初めて持ったのは、1990年代に「従軍慰安婦」問題が表沙汰になった時で、それだって戦争を通じての韓国で、文化としての韓国には興味を持っていなかった。それが差別意識に通じるのかは、私にはよく分かりません。
だけど今の若い人たちにとっては、エグザイルよりカッコイイから、Kポップスターにはまる。私も韓流にはまったことで韓国語を学びはじめて、憧れを持って韓国を見るようになった。上野さんは「差別意識はある」と語ったけれど、上野さんよりも上の世代が持っている、生理的な嫌悪のようなものは、もはや薄れてきていると私は思うんです(続く)。
【北原みのりプロフィール】 1970年生まれ。文筆家、女性のためのアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表。最新刊『さよなら、韓流』(河出書房新社)では、「韓国男性のアレ=9㎝伝説」についての検証もなされている。