ビジネス

ウォルマート式「皆様のお墨付き」PBを大幅に増やしたい西友

 膨大な商品が並ぶスーパーの食品売り場。今日、私が買う商品は決まっている。
 
 でも、売り場を歩きまわりながら、「私が欲しいものは何だったっけ」と自分に語りかけるプロセスが楽しい。「他にもまだ買うものがあったはず」と欲望を発掘していくのは消費という娯楽そのもの。
 
 西友の食品売り場で品物を物色して楽しんでいた私の眼に、不思議なキャッチコピーが飛び込んできた。
 
【●みなさまのお墨付き】

 大きな明朝体で、ココアの袋にそんな言葉が印刷されている。丸いアイコン(注・実際には二重丸)も文字も、全てが黒。何だかシュール。
 
 店内を歩くとココアだけではないことがわかってきた。カップ麺に柿の種、うどんやチューハイなど、いくつもの食品に「みなさまのお墨付き」のロゴがついている。
 
 西友の新しいチャレンジ?ちょっと風変わりなこのブランドは、どんなきっかけで店頭に出てきたのだろうか?

「ぜひ、このかりんとうを食べてみてください」。西友本社を訪ねると、黒蜜かりんとうがテーブルの上に出てきた。囓ってみる。ぽりぽりっ。うん芳ばしい。黒糖のうまみが奥に隠れていて、後をひくおいしさ。

「このかりんとうを『みなさまのお墨付き』ブランドで商品化したところ、以前に比べて売り上げが1.5倍に増えました」とマーケティング本部店舗メディアマネジメント部の木村真琴氏(41)は胸を張る。1.5倍になった、ということは新しい商品ではない?

「はい。弊社のグレートバリュー(GV)というプライベートブランド(PB)で販売していたものと同じ商品です」

 GVと言えば、低価格というイメージがまず浮かぶ。このかりんとうも150g入り97円と聞いてびっくり。

「この味と量で97円ですから、商品には自信がありました。でも、今や大手スーパーはどこも低価格のPBを出していて競争がものすごく激しい。安いというだけでは埋もれてしまう。PBも徹底的な差別化が必要だという認識のもと、新しいブランドを企画することになったのです」

「みなさまのお墨付き」が生まれたのは2012年12月。その1年ほど前から、新たなPBの模索が始まった。

「西友の親会社・ウォルマートの傘下で、急速に売り上げを伸ばしているPBがあると耳にしました。英国アズダ社の『Chosen By You』、あなたによって選ばれました、という意味のユニークなブランドでした」

 木村氏らはさっそく英国に飛び、現地を視察。その秘密を探った。

「試作品を消費者に試食・試飲してもらい、味・価格・量について、非常に良い/良い /良くない/全く良くない の4段階で評価を下していただく。一定基準を超えたものだけを商品化する、という明快な手法でした」

 アズダはそれによって顧客の信頼を集め急成長した。

「アズダの手法からいろいろと学びました。そして日本で私たちが創りあげたのが『みなさまのお墨付き』です。第三者機関を通じて20~60代の100名の消費者にご参加いただき、70%以上の方から『非常に良い』『良い』と評価された製品だけを商品化します。実は、食品では珍しい開発手法なのです」

 たとえば、さっきの黒蜜かりんとうは、何%くらいの支持を得たのでしょう?「実は90%以上とった優秀な商品なんです」と同部の越智幸三氏(31)。

「でも中には69%と、ギリギリ70%に届かず商品化出来なかったものもあります。そのような製品は味を改良し、再テストにかけ、無事合格すれば商品化されます」

「お墨付き」によって、全体の販売数量が20%アップしたと越智氏は語る。

「滑り出しは上々です。今は110品目ですが、今年中に470品目まで増やしたい」

取材・文/山下柚実

※SAPIO2013年5月号

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン