「ママカースト」なる言葉をご存じだろうか。格差社会といわれる昨今、ママ友のあいだにも序列をきめる風潮があるのだという。階層のどこに所属することになるのか、多くは父の職業や年収などで決まってしまう。実家の資産や、親の転職などで逆転することが可能だが、どうにもならないものもある。
いまさら挽回しようのない“格付け”指標が、両親の学歴である。それが如実に現われるのが、学校のPTAだ。子供を私立の難関中高一貫校に通わせる50代女性ライターはいう。
「子供の学校では、親の学歴が高くないとPTA役員になれない。だいたいは両親のどちらかが学校の卒業生の場合です。うちがなったときは『どうしてあなたみたいな家が選ばれたの?』と面と向かっていわれた」
一方で、面倒な仕事は「低学歴」に回される。
「中学校のPTAでは、両親が一流大学卒だと『子供のレッスンで忙しくて』という逃げ口上で雑用を免れて、私の家のように、夫は高卒、私は専門学校卒といった家庭に押しつけられる。絶対に子供を良い大学に入れようと決意しています」(静岡県・40代・主婦)
こうしてさまざまな要因でカーストが固定されると、そこから上のランクにステップアップするのは難しい。だが、転落するのは簡単だ。ママカーストに詳しい作家の石川結貴氏がいう。
「夫のリストラをママ友には隠していた女性が、パートに出始めたことがきっかけでバレてしまって。最初は『大変だね』と同情してくれたものが、そのうちに『不幸がうつるから怖い』といわれて、グループから外されてしまったそうで、泣いて相談の電話がありました」
唖然とするばかりだが、妻と子の生存競争において、父親にできることはあるのか。石川氏に聞いた。
「実はママカーストには、もう一つ“格付け”条件がある。父親がマメで優しく、夫婦仲がいい、これが大きなポイントなんです。どれだけ地位の高い仕事でも、忙しくて全然家に帰らない父親より、家族同士でバーベキューするときに積極的に肉を焼いてくれたり、ギターを弾いてくれる父親は母親間で評価が高い」
肉を焼き、ギターを弾く。父にできるのはそれだけだ。
※週刊ポスト2013年4月26日号